仮面ライダークロス&マックス
-Final Burning-
第8章
新たなライダーソウルとライドウォッチを使っていくライとソウゴ。2人の発揮する能力と攻撃に、トワは劣勢を強いられていた。
「まだです・・まだ私は倒れませんよ・・・!」
トワが声を振り絞って、ライたちを迎え撃つ。彼の冷静さは完全に失われていた。
「仮面ライダーは、支配のための尖兵でなければなりません・・正義や平和のために戦うなど、誕生した理由に反することになります・・・!」
「悪の戦士として生まれたからって、それ以外の生き方をしちゃいけないってわけじゃないよ!」
トワの口にした言葉に、ソウゴが言い返す。
「お前の言う通りになったら、オレは最低最悪の魔王になるしかないし、この時代に来て未来を変えようとしてるゲイツたちのしてることも許されなくなっちゃう。」
「そういう理屈には、納得しようとしてもできないな・・オレだけじゃなく、きっとノゾムも・・!」
ソウゴに続いてライも自分たちの考えを口にする。
「それが、正義や平和のために戦う理由とでもいうのですか!?・・浅はかなことで・・・!」
トワがライたちをあざ笑って、またオーラを発する。
「仮面ライダーの在り方・・それを正すのは、お前のような自己中心的なヤツじゃない・・オレだ・・!」
ライがトワに鋭く言う。強い怒りと理不尽への反発が、ライを突き動かしていた。
「クロス、ジオウ・・君たちに、オレの力を・・!」
そのとき、光輝が意識を集中して、精神力を強めた。
「メガフラッシャー!」
オメガクリスタルから光が放射された。光からライダーソウル「オメガソウル」とライドウォッチ「オメガライドウォッチ」が現れた。
「オメガ!」
ライが光輝に声を上げて、オメガソウルを手にした。
「ありがとう、オメガ・・あなたの力も、使わせてもらいますよ!」
ソウゴも感謝して、オメガライドウォッチのスイッチを入れて、ジクウドライバーにセットした。
“アーマーターイム!スピリットソウル・オメガ!”
ソウゴの体を水晶「メガクリスタル」が肩や胸部に付いた装甲「オメガアーマー」を身に着けた。マスクの複眼の形も「オメガ」となっていた。
“オメガ!”
“ライダーソウール!”
ライもオメガソウルのスイッチを入れて、クロスドライバーにセットした。
“変身・ライダー!オメガー!”
ライの姿がオメガそっくりになった。彼は「オメガフォーム」へと変身を果たした。
「仮面ライダークロス!」
「仮面ライダージオウ!」
ライとソウゴが光輝のようにポーズを取って、名乗りを上げた。
「ライダーの力の影響ですか・・今では見せられていい気がしませんが・・・!」
トワがいら立ちを噛みしめて、ソウゴに狙いを絞って飛びかかる。ソウゴが両手を握りしめて腕を構えて、トワのパンチやオーラを受け止める。
「精神力の強さがオメガの強さ。心を強く持つなら、ジオウもクロスも強くなれる!」
ソウゴとライを信じる光輝が、2人がオメガの力を使いこなせると思っていた。
「精神力で強くなる・・オメガもマックスもあなたたちも、実に厄介なことですね・・・!」
トワが声を振り絞って、黒いオーラを光の剣に変えて手にする。
「ですが今の私の力は無限大です!あなたたちが何をしようと、私を倒すことはできません!」
トワが言い放って、黒いオーラをさらに強く放出する。
「くっ!」
オーラを浴びせられるライたちが、身構えて耐える。
「オレたちは負けない・・お前の思い通りにさせるか!」
“ライダースマッシュ・オメガー!”
“オメガ!フィニッシュターイム!”
ライとソウゴが体から光を発しながらジャンプする。
「クロスオメガキック!」
「メガライダーキック!」
ライとソウゴが精神エネルギーを集めたキックを繰り出す。2人のキックはオーラを突き抜けて、トワに命中させた。
「がはぁっ!」
トワが激痛に襲われて、ふらついて倒れた。
「やった・・・!」
ライとともに着地したソウゴが、勝利したと思った。
「まだです・・まだ私は、倒れるわけにはいかない・・・!」
倒れていたトワの体が、オーラに包まれた状態で浮かび上がった。
「仮面ライダーを正すのは・・この私です・・この私だ!」
声を張り上げるトワが自分のオーラに完全に包まれた。
「な、何だ!?」
「様子が違う・・2人とも気を付けろ!」
ライが息をのんで、光輝が呼びかける。トワが黒く巨大な体へと変化していく。
「私は無敵だ!私の力は無限大!私の思い通りにならないことはない!」
トワが言い放って、全身からオーラを放出する。オーラが地面にぶつかって、ライたちの周りで爆発が巻き起こる。
「ものすごいパワーだ・・!」
「というより、暴走しているみたいだ・・・!」
ライとソウゴが爆発に耐えながらうめく。
「このままだと周りまで危険が及ぶぞ!」
「ノゾムを助けないと・・ノゾム、すぐにここから離れろ!」
光輝が声を上げて、ライがノゾムに呼びかける。
「オレは負けない・・オレはここから離れるつもりはない・・・!」
ノゾムが立ち上がって、感情を込めて言い返してきた。
「アイツの攻撃をかわさないと!早く体勢を整えないと!」
ソウゴも呼びかけて、ライがビースドライバーをノゾムに向かって放り投げた。ノゾムが目を見開いて、ビースドライバーを受け取った。
「変身!」
“チャージ・エーックス!アンリミテッド・ハイパワー!ビース・エックスライダー!”
ノゾムはビースドライバーを装着して、マックス・エックスフォルムに変身した。
“エクシード!インフィニットマックス!”
“チャージ・エクシード!インフィニット・エックス!インフィニット・マックス!ビース・エクシードライダー!”
彼は続けてエクシードフォルムになって、トワを見上げた。
「マックスが復活を果たしましたか・・それでも、あなたたちは私に倒されるしかない!」
トワが言い放って、ノゾムに向けてもオーラを放出する。ノゾムもトワに向かってジャンプする。
ノゾムがオーラを浴びて、マックスのスーツから火花が散る。それをものともせずに、彼はオーラを突っ切る。
「何っ!?」
驚くトワに向けて、ノゾムが両手のパンチを繰り出した。パンチを体に受けて、トワが体勢を崩して落下する。
「怒りと憎しみを力に変えて、私の力を押し込んだだと・・!?」
トワがノゾムにも押されていることに、驚きを隠せなくなる。
「オレはお前を許しはしない・・自分の目的のために、他のヤツを思い通りにして平気な顔をしているお前を!」
ノゾムが怒りの声を上げて、トワに鋭い視線を向ける。
「お前はたくさんの人から怒りを買い過ぎたみたいだね・・君と行動をともにしていたライダーからもね・・!」
ソウゴが投げかけた言葉を聞いて、トワが視線を移す。倒れていたキョウが意識を取り戻して、ゆっくりと立ち上がってきた。
「あなた、まだ生きていたのですか!?」
「マックスもだが・・オレを利用し、オレにここまでの屈辱を味わわせたお前も許さないぞ、トワ・・!」
目を疑うトワに、キョウが怒りの声を上げる。
「あの人もマックスも、お互いを許しちゃいないけど、他の許せない相手という共通点がある・・!」
「その感情は、オレたちの中にもある・・オレは、オレたちは、アイツの作り出そうとする世界を認めない!」
ノゾムとキョウの感情に対して、ソウゴが頷いて、ライも自身の思いを口にする。考え方が違っても、トワのやり方と目的を許せないという共通の気持ちが、彼らにはあった。
そのとき、ノゾムのまとうマックスのスーツから光があふれた。光はライダーソウル「マックスソウル」とライドウォッチ「マックスライドウォッチ」に変わって、ライとソウゴの手に渡った。
「ノゾムの強さが、オレたちにも届いた・・・!」
戸惑いを覚えるライに、ノゾムが目を向けた。
「オレはオレだ・・その力をどう使おうと、それが変わることはない・・!」
ノゾムが言いかけて、ソウゴが小さく頷いた。
“マックス!”
“ライダーソウール!”
ライもマックスソウルのスイッチを入れて、クロスドライバーにセットした。
“変身・ライダー!マックース!”
クロスもマックスそっくりの姿になった。
ソウゴもマックスライドウォッチのスイッチを入れて、ジクウドライバーにセットした。
“アーマーターイム!アニマルビースト・マックース!”
ソウゴがマックスを思わせる形の赤い装甲を身にまとった。マスクの複眼は「マックス」の形になった。
ライが「マックスフォーム」になって、ソウゴが「マックスアーマー」を身に着けた。
「マックスの力も身に着けた・・2人とも、仮面ライダーとのつながりを深めた・・!」
光輝がライとソウゴの強さを感じて、戸惑いを覚える。
「オレの怒りは限界突破!」
ライ、ソウゴ、ノゾムが同時に怒りの声を上げた。込み上げてくる激情を込めて、彼らが両手を強く握りしめる。
「マックスが3人になったような状況ですか・・まとめて倒せばいいだけのことです!」
トワが言い放って、ライたちに向かって黒いオーラを放つ。ライたちは身構えて、オーラに耐える。
「オレはお前に絶対に屈しない!」
「お前が作ろうとしている世界は、オレたちが実現させない!」
「オレが、オレたちが、全てを正す!」
ノゾム、ソウゴ、ライが言い放って、オーラを突っ切ってトワに近づく。彼らが力任せに繰り出すパンチを、トワがオーラと両手で受け止めていく。
「私は負けはしない・・仮面ライダーを、全てを正すのは私です!」
「そのお前を、オレたちが正す!」
トワとライが互いに言い放つ。ライ、ソウゴ、ノゾムが同時にパンチを繰り出して、トワを突き飛ばす。
「がはっ!」
トワが突き飛ばされて、ライたちから大きく離される。
「私はここで倒れるわけにはいかない・・私は仮面ライダーを、正しい形に戻さなければならないのです・・・!」
トワが声を振り絞って、クロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転を加えた。
“ライダースマッシュ・ルシフェール!”
浮かび上がるトワからあふれる黒いオーラがさらに濃くなっていく。
「お前の思い通りには、死んでもならない!」
ノゾムが言い放って、エクシードスマッシャーを手にして、画面をスライドして「X」を表示させた。
“エクシードチャージ!エクシードスマーッシュ!”
ノゾムが体からエネルギーを放出する。
「オレたちの居場所、お前のようなヤツにムチャクチャにはさせない!」
ライも言い放つと、クロスタイフーンを回転させる。
“ライダースマッシュ・マックース!”
彼の足にもエネルギーが集まっていく。
「最高最善にしてみせる・・オレ自身も、みんなの世界も未来も!」
ソウゴも自分の思いを口にして、ジクウサーキュラーを回転させる。
“マックス!フィニッシュターイム!”
ソウゴの足にもエネルギーが集まった。3人が同時にジャンプして、トワに向かってキックを繰り出す。
「2度と反抗できないよう、完全に消滅させる!」
トワが怒号を放って、オーラを放出してライたちのキックを受け止めた。両者の衝突は拮抗状態になる。
「このまま・・このまま押し切ってくれる!」
トワが笑みを浮かべて、オーラを強くしていく。
「いつまでもいい気になるな、トワ・・!」
そのとき、キョウがトワの腕をつかんで、強く握りしめてきた。
「あなた!?・・相手はマックスでしょう!私ではありませんよ!」
「ヤツはオレが倒す・・お前などに邪魔されるわけにはいかない!」
驚きを見せるトワに、キョウが鋭く言い放つ。
「あなたも往生際が悪いですね・・いい加減に消え失せろ!」
トワが激高して、オーラの一部を光の刃に変えた。
「ぐっ・・!」
刃に体を貫かれて、キョウがうめく。体に力が入らなくなって、彼がトワから離れていく。
そのとき、トワのオーラがライたちのキックに押し込まれていく。トワがキョウに注意を向けたために、オーラの力が弱まった。
ライ、ソウゴ、ノゾムが一気に力を込めて、キックを押し込んだ。キックが閃光のようにトワに襲い掛かった。
「そ、そんな!?・・私は・・私はあぁー!」
トワが絶叫を上げて、きらめいた光の中に消えた。彼の装着していたクロスドライバーとルシフェルソウルも、塵のように消えていった。
ライたちが着地して、キョウが地面に落ちて倒れた。
「トワを倒した・・セイントの、いや、ルシフェルの企みを止めた・・・!」
光輝がライたちの勝利を実感する。
「アイツを倒すことはできたけど・・・」
ソウゴが言いかけてライ、ノゾムとともにキョウに目を向けた。
“スリービースト。”
ノゾムがマックスへの変身を解いて、キョウに近づいた。
「オレを助けたつもりじゃないのは分かっている・・オレを倒そうとして、獲物を横取りされたくなかったんだな・・」
「そういうことだ・・お前は、オレが倒す・・・!」
見下ろして言いかけるライに、キョウが声を振り絞る。
「オレは倒れない・・身勝手を押し付ける連中の思い通りには、オレは絶対にならない・・・!」
「それで親父たちが殺されたんじゃ、たまったもんじゃない・・親父たちは、世界を動かしてきたっていうのに・・・!」
「それで間違いを正しいことにしていいっていうのか!?・・自分の間違いを棚に上げて、他のヤツらに身勝手を押し付けるな!」
「マックス・・・たとえ死んでも、オレは何度でも、お前を倒しに行く・・・!」
怒りの声を上げるノゾムに対して、キョウが嘲笑を投げかける。彼は力尽きて動かなくなった。
「許せないことを正すことを間違いだと言うのは、その間違いをした人と同じだと思っているんだね・・」
ソウゴが言いかけると、ノゾムが彼に目を向ける。ソウゴがジクウドライバーを外して、ジオウへの変身を解いた。
“変身カイジョー。”
ライもクロスへの変身を解除した。光輝もオメガドライバーを外して、オメガから元に戻った。
「僕たちはそれぞれの正義や大切なもののために戦っている。ノゾムくんの場合、その相手はビースターだけじゃなく、普通の人間も含まれているということか・・」
光輝がノゾムの心境を察して言いかける。
「怪人ばかりが悪いわけじゃない・・人間の中にも、悪いヤツがいるってことだ・・・」
ノゾムが光輝に言い返して、今までの自分の戦いを思い返していく。
自分勝手な人間もいれば、優しさを持ったビースターもいる。そのことを痛感していたノゾムは、人間もビースターも関係なく、敵と戦い続けることを心に決めていた。
「もしも他の仮面ライダーが、人間を守ろうとして君と戦うことになったら・・!?」
「敵はもちろん、敵を守ろうとするヤツもオレは許しはしない・・どうしても邪魔しようとするなら、オレはブッ倒す・・!」
光輝から問い詰められても、ノゾムは自分の意思を変えない。
「自己満足じゃない・・みんなを守ろうとするなら、僕は止めはしない・・」
光輝は真剣な顔で頷いて、ノゾムに背を向けた。
「何が正しいのかを、誰もがきちんと考えなくちゃならないってことか・・そうしないと、人間も仮面ライダーも正義じゃなく悪になってしまう・・・」
「そうだね・・王様も、仮面ライダーも・・」
ライとソウゴが大切なことを考えて、ノゾムたちに頷いた。
「オレはまりちゃんのところに行く・・これだけの騒ぎだ。ここから離れたところにいると思う・・」
ライがまりを心配して言いかける。
「ライ、オレも行く・・一緒に戻るぞ・・」
「ノゾム・・ありがとう・・」
ノゾムが呼びかけて、ライが感謝した。
「オレもゲイツのところに戻らなくちゃ。1人で戻ろうとするかもしれないから、追いかけないと。」
ソウゴが笑みを見せて歩き出す。
「ありがとう、みんな。僕もがんばるよ。みんなが平和で幸せでいられる王様になるためにね。」
自分の夢を気さくに言って、ソウゴはライたちの前から去っていった。
「王様になる・・みんなのことを考えるなら、それでもいいが・・・」
「ただの王様なら許せなかった。最低最悪の魔王っていうならなおさら・・だけどそういう考えなら、最高最善の王だというなら、オレは構わない・・・」
ライとノゾムはソウゴの生き方と戦いを信じることにして、彼を見送った。
「オレも行く。また会うことがあったら、今回のように力を合わせよう。」
「ライくん、ノゾムくん、君たちの大切なものを守ろうとする魂、僕も信じているよ。」
Gと光輝がライとノゾムに言いかける。Gがキョウを抱えて、光輝とともに歩いていった。
「それぞれの思い、それぞれの戦う理由か・・」
「それでもオレはオレの戦いを続ける・・オレやみんなが身勝手に踏みにじられるのがいいことにされるわけにはいかない・・・!」
ソウゴたちの意思や思いを知って考えさせるライと、それでも自分の戦いを続けようとするノゾム。
「理屈や説明で全部割り切れるほど単純じゃない・・オレたちの怒りも世界のおかしさも・・・!」
「たとえ、他のライダーと戦うことになっても・・・!」
ノゾムが自分の意思を口にして、ライが言いかける。ノゾムが頷いて、自分の戦う理由を確かめる。
「オレも、間違いを正すために戦う・・たとえクロスにならなかったとしても、その気持ちは持っていたはずだ・・理屈とかじゃなくて・・・」
「お前とオレは、やっぱり似た者同士だな・・・」
言いかけるライに、ノゾムが笑みを見せた。
「早く行くぞ。お前の知り合いが待っているんだろう、ライ・・?」
「ノゾム・・あぁ・・・!」
呼びかけるノゾムに、ライが笑みを見せて頷いた。2人はまりのところへ歩き出した。
ライたちとトワの激しい戦いで、遠ざかるしかなかったまり。彼女は騒動が治まったのを見計らって、クロスたちを捜しに動き出した。
「クロスたち、大丈夫かな・・・?」
まりが周りを見回して、クロスたちの行方を追う。
「まりちゃーん!」
そこへ声がかかって、まりが振り返る。彼女はライとノゾムの姿を発見した。
「ライくん!ノゾムさん!」
まりが声を上げて、歩いてくるライたちに向かって駆け込んだ。
「まりちゃん!」
ライも気付いて、まりを前にして安心の笑みを浮かべた。
「ライくんたちもここに来ていたんだね・・あなたたちも無事でよかった・・!」
「まりちゃんも無事でよかった・・助かったんだね・・・!」
まりとライが互いに無事を喜ぶ。
「でも、仮面ライダーのみなさんが・・・!」
まりが仮面ライダーたちの心配をする。
「心配しなくていい・・みんな無事だ・・みんな、オレと別れてそれぞれの戦いに戻っていった・・」
ノゾムがソウゴたちのことをまりに伝えた。
「そうですか・・よかった・・・」
まりがまた安心を見せて笑顔を浮かべた。
「まりちゃん、かなたたちも心配して待ってる。早く戻るぞ。」
「うん・・」
ライが呼びかけて、まりが小さく頷いた。2人が動物公園を目指して、ノゾムも笑みをこぼして歩き出した。
動物公園でライ、ノゾム、まりの帰りを待っていたかなた、ツバキ、タイチ、ワタル、ワオン。ソウマとシゲルはゲイツ、聖也と別れて、先に戻ってきていた。
「ノゾムたち、大丈夫かな・・?」
「ノゾムはどんなことがあっても生き延びるヤツだ・・必ず戻ってくるさ・・」
心配するツバキに、ソウマが自信を込めて答える。
「ライくんも戻ってくるよ。まりちゃんと一緒に・・」
かなたもライたちの無事を信じていた。
そのとき、ワオンが吠えだして、かなたたちがその方向に目を向けた。ライ、まり、ノゾムが戻ってきた。
「ライ!まりちゃん!」
「ノゾム!みんな無事だった・・!」
かなたとツバキが声を上げて、ライたちに向かって走り出した。
「ノゾム・・全部終わったんだな・・」
「あぁ・・今回のことはケリがついた・・・」
シゲルが言いかけて、ノゾムが小さく頷いた。
「間違いを正したことに、アイツは反発してきた・・自分たちが間違っていたのを棚に上げて、オレが間違いをしていると決めつけて・・・!」
ノゾムがキョウの考えに対しても怒りを感じていた。
身勝手や理不尽によってムチャクチャにされる辛さ。それが正しいことにされていいわけがない。
間違いを正そうとするのに反発することは、その間違いに加担しているのと同じ。ノゾムはそう考えていた。
「ノゾムはホントに強情だな・・」
「そうでないとノゾムじゃないってところまで来ているけどな・・」
ソウマとシゲルがノゾムについて言いかける。
「ノゾムお兄ちゃん・・また、どこかに行ってしまうの・・・?」
ワタルがノゾムに向かって、悲しい顔を浮かべて問いかける。
「また行くかもしれないが、それは今すぐじゃない・・ここで休んで、少し動物たちの世話をしていくさ・・」
「お兄ちゃん・・・僕も、動物のみんなのお世話の手伝いをしていきたいよ。」
ノゾムが微笑んで答えて、ワタルが喜んで意気込みを見せる。
「動物のこと、いろいろ教えてやるからな・・」
「うんっ!」
優しく頭を撫でてきたノゾムに、ワタルが笑顔で頷いた。
「許せないから戦う・・みんなを守って悪いものと戦うのは、そういうものだよね・・」
まりがノゾムの揺るぎない信念を垣間見て、戸惑いを感じていく。
「オレも、そんなのかもしれない・・許せないから立ち向かうっていうところは・・・」
「ライくん・・・」
ライが自分の考えを口にして、まりが不安を感じた。
「ライくん、仮面ライダー・・と一緒にムチャしているんじゃ・・・」
まりが心配の声を上げると、かなたが苦笑いを見せた。
「まりちゃん、そろそろ戻ろうよ。おやっさんも心配してるから・・」
「あ、うん、そうだね。ひろしさんを安心させてあげないと・・」
かなたが呼びかけて、まりが気持ちを落ち着けて頷いた。
「ノゾムさん、ツバキさん、タイチさん、いろいろありがとうございました。」
まりが頭を下げて、ノゾムたちにお礼を言った。
「まりちゃんもみんなも無事で何よりだよ。」
「またこっちに遊びに来て。大歓迎だよ。」
ツバキとタイチがまりたちに笑顔で答える
「はい。ではまた・・ワタルくん、またね。」
「うん、まりお姉ちゃん♪」
真理が挨拶して、ワタルが笑顔で答えた。かなたとまりが先に歩き出していく。
「ノゾム・・また、一緒に戦ってくれるか・・・?」
「あぁ・・オレもお前も、許せないものに立ち向かうんだろう・・?」
ライが声を掛けると、ノゾムが答える。彼からの言葉に、ライも小さく頷いた。
「会うことがあったら、またよろしくな・・お前の力と心、頼らせてもらう、ライ・・」
「オレもよろしくな、ノゾム・・」
ノゾムとライが声をかけ合って、手を差し伸べて握手を交わした。思いと意思が近い2人が、互いに結束と決意を強くしていた。
「ライ、行くよー!早く帰ろうよー!」
かなたが立ち止まって、ライに呼びかけてきた。
「急がないと・・それじゃ・・!」
ライがノゾムに挨拶して、かなたたちを追いかけていった。
(心から許せないものに対して、逆らい続けて立ち向かう。そういうヤツが増えていけば、みんな強く優しくなれる・・)
ライたちを見送るノゾムが、彼のような存在がいることに勇気づけられていた。
(オレも信じているぞ・・お前たちの目指す未来を・・・)
ライたちへの信頼を実感して、ノゾムは笑みをこぼしていた。
「ノゾムお兄ちゃん、家に帰ろうー!」
ワタルがノゾムに向かって呼びかけてきた。ツバキたちも彼を待っていた。
「あぁ・・今行く・・・」
ノゾムが微笑んで、ツバキたちとともに歩き出す。
自分の怒りと生きる意味をかけた戦い。その中で帰る場所、安らげる場所があるのは幸せだと、ノゾムは改めて感じていた。
怒りと仲間への信頼を強さにして戦う戦士。
ライとノゾム。それぞれの感情のために、彼らはそれぞれの戦いを続けていく。
仲間や家族の思い、仮面ライダーの魂を胸に秘めて。