仮面ライダー BLACK・RX・マックス
-地球を駆ける黒き勇者-
第10章
ノゾム、RX、BLACKが戻るのを待っていたソウマ、戦兎、永夢、光輝。彼らの前にノゾムたちが戻ってきた。
「ノゾム、光太郎さん・・終わったのか・・・」
ソウマが声をかけて、ノゾムが小さく頷いた。
「さっきのカードはアイツをやっつけた後に消えた・・役目を終えたってことなんだろうな・・・」
「そうか・・このとき限りだったってことか・・・」
「でも、僕たちが君の力になれてよかった・・」
ノゾムの口にした言葉を聞いて、光輝が納得して、永夢が喜んで微笑む。
「まだまだオレの分からないことがあるみたいだ・・」
戦兎が腕組みをして考え事にふける。
「シャドームーン・・邪眼は倒したぞ・・」
「ブラックサン・・今回はお前の勝ちだ・・だがこれで終わったと思うな・・・」
BLACKが声をかけて、シャドームーンが声を振り絞る。
「いずれ再びよみがえり、お前の首をもらうぞ・・・!」
BLACK、RXへの敵意と再挑戦を告げるシャドームーン。
「オレはこれからも自由と平和を守るために戦い続ける・・シャドームーン、いや信彦、お前が平和を壊そうとするなら、オレはお前と戦うことも迷わない・・!」
RXが揺るがない決意を口にする。彼はシャドームーンと、親友である信彦と戦うことも覚悟していた。
「待っていろ、ブラックサン・・・南・・光太郎・・・」
RXとBLACKへ言いかけると、シャドームーンが力尽きた。
「信彦・・信彦!」
BLACKがシャドームーンに向かって叫ぶ。
世紀王の宿命という敵対を強いられ、親友と戦うことを心に決めたBLACKとRXだが、信彦の死は胸が張り裂けるほどの悲しみは禁じ得なかった。
「光太郎さん・・・」
RXたちの心境を察して、光輝も辛さを感じていた。
「戻ろう・・あなたの親友と一緒に・・・」
ノゾムの声にRXとBLACKが頷いた。RXはシャドームーンを抱えて、ノゾムとBLACK、戦兎たちとともに歩き出した。
ノゾムたちの帰りを待つツバキたち。ワタルはノゾムや光太郎たちの心配をして、落ち着けないでいた。
「空が急に暗くなったけど、また明るくなった・・みんな、大丈夫かな・・・?」
「ノゾムなら大丈夫だよ。どんなことがあったって生き延びようとするからね。それに今回は光太郎さんがついているんだ。」
声を振り絞るワタルに、タイチが励ましの言葉を送る。ノゾムたちは無事に戻ってくると、ワタルも信頼を強めた。
「あ、あれ!みんなが戻ってきたよ!」
ツバキが声を上げて指さして、タイチたちも目を向ける。ノゾム、ソウマ、戦兎、永夢、光輝、2人の光太郎が戻ってきた。
「ノゾム、ソウマくん、無事だったんだね・・みなさんは・・?」
ツバキがノゾムたちに声をかけてから、戦兎たちに目を向けた。
「みんなも仮面ライダーってヤツさ。フォックスやマックスとは別のな。」
「ま、違う能力のライダーたちのベストマッチも、悪くないかもな。」
ソウマが紹介をして、戦兎が笑みをこぼす。
「光太郎さん・・・シャドームーン・・・」
ワタルが光太郎に抱えられているシャドームーンを見て、動揺を見せる。ワオンはシャドームーンを見ても、怯えも興奮もしていない。
「シャドームーンじゃない。オレの親友だ・・」
光太郎が答えて、横たわっているクジラ怪人に目を向ける。
「クジラ怪人・・ツバキさんたちを守ってくれて、ありがとう・・」
クジラ怪人に感謝を告げる光太郎。ノゾムが彼と頷き合ってから、クジラ怪人を抱えた。
シャドームーンとクジラ怪人を連れてノゾムたちが訪れたのは、海辺だった。彼らは2人をクジラ怪人の故郷である海へ弔おうとした。
「オレからもありがとうな・・動物の好きなオレだ・・海の動物がイヤな思いをするのは、オレもイヤだからな・・」
「クジラ怪人、僕も海も動物たちも守っていくよ・・だから安心して・・」
ノゾムとワタルがクジラ怪人に1つの決意を告げる。
「信彦・・オレは戦い続けるよ。自由と平和、人々の命と幸せを守るために・・」
シャドームーンに自分の決意を告げる光太郎。彼はノゾムと一緒に、シャドームーンとクジラ怪人を海へ流した。
シャドームーンとクジラ怪人の亡骸は、海を流れて彼方へと消えていった。
「クジラ怪人はともかくだけど、あのシャドームーンってヤツ・・もしまた復活したら何か仕掛けてくるんじゃないのか・・・?」
「そうだとしても、オレは戦うことを迷わない。自由と平和を守るため、オレはこれからも戦い続ける。」
ノゾムが投げかけた疑問に、光太郎が決意を込めて答える。
「自由と平和・・オレはそこまで大げさなものはない・・それでもオレは、オレの戦いを続ける・・・」
「それが誰かのため、大切な人のためになるのなら・・」
ノゾムの真剣を聞いて、光太郎が頷いた。
「僕は行くよ。僕も僕の戦いを続けるよ、RX。」
「たとえ時間や世界が違っていても、オレたちはつながっている。世界と人々を守る戦い、これからも続けていこう、BLACK。」
2人の光太郎が決意を口にして、しっかりと握手を交わした。光太郎の1人はBLACKへ変身して、バトルホッパーに乗って、ロードセクターとともに走り出した。
(ありがとう、過去のオレ。君がいなかったら、オレは世界を守れなかっただろう・・)
過去の自分への感謝を胸に秘める光太郎。
「さて、オレも帰るとするかな。やらなくちゃいけないことがたくさんあるからな。」
戦兎が言いかけて、ノゾムたちに背を向けた。
「いつかまた会えるときが来るかもしれないな。そのときはまたよろしく。」
戦兎は笑みをこぼしてから、ノゾムたちの前から歩き出した。
「では僕も行きます。そろそろ戻らないと・・」
永夢も続けてノゾムたちから歩き出す。
「僕も行きます。光太郎さん、それでは。」
光輝も言いかけて、光太郎と握手を交わした。
「ノゾムくん、ソウマくん、これから厳しい戦いがあるかもしれない。でも君たちなら何があっても乗り越えられる。」
「家族や仲間、大切な人を守ろうとする思いを忘れないでほしい。」
光輝と永夢がノゾムとソウマに目を向けて、励ましの言葉を送る。
「そんなこと、言われなくてもそのつもりだ・・オレはオレの考えを貫く。許せない敵を倒す。それだけだ・・・」
自分の考えを変えないノゾムに対して、永夢と光輝は笑みを見せたまま頷いた。2人も再会を心の中で願いながら、ノゾムたちの前から歩き出した。
「光太郎さんも行くんですね・・」
タイチが声をかけて、光太郎が頷く。
「オレは1度、親友や家族、全てを失った。それでも自由と平和を守るために戦ってきたことを後悔はしていない。」
光太郎がノゾムに振り返って、激励を送る。
「これからも君たちは、たくさんの出会いや別れ、喜びや悲しみを体験していくことになる。その中でも苦難に負けない強さと、揺るぎない信念を忘れないでくれ・・」
「あぁ・・オレは戦い続ける・・オレたちを思い通りにしようとするヤツらと・・・」
光太郎の言葉を受け止めながらも、ノゾムは自分の意思を貫こうとする。
「君たちの中にある勇気と心の強さ、決して忘れないでいてほしい。」
光太郎が投げかけた言葉に、ノゾムが頷いた。2人が手を差し伸べて握手を交わした。
ツバキ、タイチ、ソウマ、ワタルも光太郎の言葉を聞いて頷いていた。彼らは大切なことを実感して、心に留めていた。
「ありがとう、みんな。また会えることを、オレも願っているよ。」
光太郎がノゾムたちに微笑むと、1人歩き出す。彼の姿がRXへと変わった。
RXはアクロバッターに乗って、ライドロンとともに走り出した。
(ありがとう、光太郎さん・・オレはオレの戦いを続けるが、アンタの言葉と思いは、絶対に忘れない・・!)
光太郎との絆を実感して、ノゾムは微笑んで頷いた。
「オレもやるぞ・・光太郎さんや他のライダーたちに負けないように・・・!」
決意を口にしたノゾムが、タイガーランナーに歩み寄った。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
彼はマックスに変身して、タイガーランナーに乗って走り出した。
「ノゾムお兄ちゃんにも、光太郎さんやライダーたちの思いが届いたんだね・・」
ワタルがノゾムの走り出す姿を見て微笑む。
「それでもノゾムはノゾムの生き方と戦い方を続けるだろうね・・それがノゾムだから・・」
タイチが答えて、ワタルが小さく頷いた。
「平和とか命だけじゃない。大切なものを守るために戦う。それが、仮面ライダーっていうものなんだね・・」
「ノゾムも、その志をちゃんと持っている。大切なものを守るために戦っている・・だからノゾムも、仮面ライダーなんだよ。」
ワタルが口にした言葉に、ツバキが答える。ノゾムの揺るがない信念を、ツバキたちは信じていた。
復活を果たしたゴルゴムとクライシス帝国、その黒幕である邪眼の野望は、仮面ライダーの活躍と結束によって打ち砕かれた。
しかし邪悪な意思を持った怪人が、新たな戦力と作戦で地球を狙ってこないとも限らない。
世界と人々、自由と平和、大切なものを守るため、仮面ライダーはそれぞれの場所で戦いを続けていく。
親友との思い出と仲間との結束を胸に、光太郎は走り続ける。
不条理を振りかざす敵に立ち向かうため、ノゾムは戦い続ける。
大切なものを守るため、自分の信念を貫くため、素顔を隠して戦いを続ける。
それが、自由の戦士、仮面ライダー。