GUNDAM WAR -Mark&Ark-
PHASE-02「争いは再び」
ルナマリアの乗るインパルスと、ハルの乗るファルコン。ミネルバより先行した2機が、クレッセントたちとザクのいるエリアD2に到着した。
「ソラ、マイ、大丈夫!?」
「ハル・・来てくれたの・・・!?」
呼びかけるハルに、ソラが戸惑いを覚える。
「あなたたち、自力で戻れるわね?ミネルバも向かっているから、あなたたちは戻るのよ。」
ルナマリアがソラとマイに呼びかける。インパルスがビームライフルを手にして射撃して、クレッセントたちを遠ざける。
「ソラ、言うことを聞こうよ・・ここにいても私たちはやられちゃうだけだよ・・・」
「仕方がない・・・ザク、帰投します!」
マイの呼びかけを渋々聞いて、ソラはザクを動かして、エリアD2から離れていく。
「逃がすか!」
マキが言い放ち、マグナがレールガンでザクを狙う。そこへファルコンが飛び込んできてビームを発射して、マグナの射撃を阻んだ。
「行くんだ、ソラ!」
「ハル!・・うん!」
ハルに呼びかけられて、ソラが答える。ザクがクレッセントたちの射程から完全に離れた。
「逃げられた・・せっかくの標的だったのに・・・!」
「油断するな。あのザクよりも、目の前に現れた2機のほうが強敵だ。」
いら立ちを浮かべるマキに、スーラが呼びかける。
「今、私たちが優先するのは、敵の撃墜じゃなくミネルバや他の救援が来るまで時間を稼ぐこと。焦りは禁物よ。」
「分かっています・・このファルコンのスピードでかいくぐってみせます・・!」
ルナマリアの呼びかけにハルが答える。
「あれはインパルス・・ここで出てくるとは・・・!」
アテナがインパルスを見て目つきを鋭くする。
「スーラはあのMSを追って。私とマキでインパルスを叩く・・」
「分かった。まずはインパルスを確実に倒そうということだな。」
アテナの呼びかけにスーラが答える。
「もう、スーラだけ1対1なんてずるいよ・・!」
「私たちの相手はインパルス。あの機体の性能は未知数だけど、インパルスのほうを警戒したほうがいいわ・・」
文句を言うマキに、アテナが注意を投げかける。
「私が接近して攻撃する。マキは砲撃を・・」
「分かったよ、アテナ。しくじらないでよね・・・!」
アテナの指示をマキが渋々受け入れる。クレッセントがビームサーベルを手にして、インパルスに向かっていく。
インパルスもビームサーベルを手にして、クレッセントとの距離を取る。ルナマリアはクレッセントだけでなく、マグナの動きにも注意を向けていた。
ルナマリアは注意と回避を試みて、クレッセントが振りかざすビームサーベルをかわしていく。
「コイツをくらいな!」
マキが言い放ち、マグナがレール砲をインパルス目がけて発射する。ルナマリアが反応して、インパルスが動いてビームを回避する。
(とりあえず、あの2体をうまくここから引き離さないと・・・!)
クレッセントとマグナをエリアD2から引き離そうとするルナマリア。インパルスがビームサーベルからビームライフルに持ち替えて、牽制の射撃を行う。
「アイツ、小賢しいマネを・・!」
インパルスの行動にいら立ちを募らせるマキ。クレッセントとマグナがインパルスを追って動き出した。
ルナマリアとハルに助けられて、ソラとマイは撤退することができた。その先の湾岸に来たところで、2人はミネルバを発見した。
「やった〜!ミネルバだよ〜!」
マイがミネルバを見て喜びの声を上げる。
「ちょっと静かにしてって!・・ミネルバ、こちらソラ!収容をお願いします!」
“2人とも無事だったのね・・詳しい事情は後で聞きます。早く着艦を。”
呼びかけるソラにミーナが応答する。ザクがミネルバに着艦して収容された。
損傷したザクからソラとマイが降りてきた。
「はう〜・・助かったよ〜・・」
「安心するのはまだだよ。ミネルバはこのままエリアD2に向かうことになるんだから・・」
安心を見せるマイにソラが呼びかける。ソラはすぐにパイロットスーツに着替えて、ドックに戻ってきた。
“ソラ、あなたにはルナマリアとハルの援護に向かってもらうわ。”
「分かりました。今度はやられません。」
ミーナの指示にソラが答える。ソラが乗り込んだのは、先ほど乗っていたものとは別の青色のザクに、「ウィザードシステム」の1種「ブレイズウィザード」を搭載した「ブレイズザクファントム」である。
このブレイズザクファントムがソラの現在の本来の搭乗機である。
「システムオールグリーン。発進準備完了。」
コックピットをチェックして発進に備えるソラ。ブレイズザクファントムの前のハッチが開かれていく。
「ソラ・アオイ、ザク、出ます!」
ソラの乗るブレイズザクファントムがミネルバから出てきて、その艦上で戦闘に備える。ミネルバはエリアD2に向けてさらに進んでいった。
ハルの乗るファルコンを追っていくスーラのトリトン。トリトンが発射するビームを、ファルコンが素早くかわしていく。
ハルはトリトンを引き付けるため、一定の距離を保ちながら移動していく。
(このままあのMSを人のいないほうに引き付けて・・)
ハルが動きをうかがいながらトリトンを引き付けていく。トリトンが岩場の影に身を潜めた。
(いなくなった?・・引き返すつもりなのか・・・!?)
ハルがトリトンの行方を探す。ファルコンがスピードを落として、岩場に引き返して旋回していく。
「本当にどこに行ったんだ・・!?」
ハルがトリトンの行方を追っていく。
そのとき、ハルが突然衝撃に襲われる。ファルコンに何かがのしかかってきた。
「な、何だ!?」
声を荒げるハルがカメラとモニターを確かめる。ファルコンにのしかかってきていたのはトリトンだった。
「い、いつの間に!?・・まさか、ミラージュコロイドか!?」
一瞬驚くハルだが、トリトンがミラージュコロイドを使ってファルコンに近づいてきたことに気付いた。
「でもコロイドなら、姿が見えなくなるだけで・・!」
ハルはファルコンを動かして左右に振る。トリトンが振り落されるも、体勢を整えて着地する。
トリトンが再びミラージュコロイドを使って姿を消す。スーラは再びファルコンに近づこうとする。
「熱や空気の動きまでは消せない!」
ハルが言い放ち、ファルコンに備わっているサーモグラフィを使用した。これにより姿を消しているトリトンの熱や動きを捉えることが可能となる。
そしてファルコンが変形を始めた。戦闘機型から人型となったファルコンが両手にそれぞれビームサーベルを手にした。
ファルコンが後ろにビームサーベルを振りかざす。その切っ先が、姿を現したトリトンの眼前を通り過ぎていった。
スーラがとっさにファルコンの迎撃に気付いて、トリトンを後退させたことで、紙一重でかわすことができた。
「コロイド対策はもう基本となっているのか・・」
ミラージュコロイドによる不意打ちは不利になるばかりだと痛感したスーラ。トリトンがビームジャベリンを手にして構える。
ファルコンが飛びかかり、ビームサーベルを振りかざす。ビームジャベリンを掲げるトリトンだが、ファルコンの速い攻撃に防戦一方になっていく。
「このMS、動きが速い・・!」
ファルコンのスピードを痛感するスーラ。ファルコンのスピードはトリトンを上回るものだった。
クレッセントとマグナを引き付けながら、両者の攻撃をかいくぐっていくルナマリアのインパルス。エリアD2から離れたところで、ルナマリアは反撃に思い立った。
インパルスとクレッセントがビームサーベルを振りかざしてぶつけ合う。
「アイツ、いつまでも調子に乗るなよ・・!」
マキがいら立って、マグナがインパルスにレールガンを構えて、エネルギーを集めていく。
「これでも食らえ!」
マキが言い放ち、マグナがインパルスに向けてビームを発射する。ルナマリアが気づき、インパルスが後ろに下がってビームをかわす。
そこへクレッセントが飛び込み、インパルスに向けてビームサーベルを振り下ろしてきた。ルナマリアが反応して、インパルスがシールドでビームサーベルを受け止める。
しかしクレッセントがビーム突撃砲を発射してきた。
「うっ!」
インパルスが押されてルナマリアがうめく。体勢を崩したインパルスに、クレッセントが続けてビームサーベルを振りかざす。
インパルスがシールドを持った左腕を切り落とされる。
「しまった!」
声を荒げるルナマリア。追い込まれるインパルスに、クレッセントが迫ってビームサーベルを振りかざしていく。
インパルスがビームサーベルでクレッセントのビームサーベルを受け止めていく。しかし立て続けにビームサーベルを振りかざすクレッセントに、インパルスは防戦一方になっていた。
「次こそインパルスを仕留めてやるよ・・・!」
マキが不敵な笑みを浮かべて、マグナがレールガンを構えてエネルギーを集中していく。
「アテナ、そこをどいて!」
マキの呼びかけを耳にして、アテナが反応して、クレッセントがインパルスから離れる。
「これでとどめだよ、インパルス!」
マキがインパルスに砲撃を仕掛けようとした。
そこへビームが飛び込んできて、マキが砲撃を中断して回避行動を取る。ビームは動いたマグナの横を通っていった。
「な、何っ!?」
突然の攻撃に驚きを覚えるマキ。ルナマリアもアテナもビームの飛んできたほうに目を向ける。
「来てくれた・・ミネルバ・・・!」
安堵の笑みをこぼすルナマリア。ついにミネルバが到着し、インパルスを援護してきたのである。
「待たせたわね、ルナマリア。フライヤーを飛ばすから立て直して。」
ミーナのルナマリアに向けて呼びかける。
「了解!チェストフライヤーを!それとソードシルエットと、デュートリオンビームを!」
彼女に答えるルナマリア。ミネルバからビームが放たれて、インパルスに照射されていく。
インパルスはデュートリオンビームを受けることによって、消耗したエネルギーを回復させることができるのである。
「チェストフライヤー、ソードシルエット、発進!」
オペレーターであるマイの呼びかけとともに、ミネルバからチェストフライヤーとシルエットシステム「ソードシルエット」が射出された。
インパルスが分離して、新しいチェストフライヤー、ソードシルエットと合体して、近接戦闘に特化した「ソードインパルス」となった。
「ミネルバが来た・・これでインパルスがさらに厄介になる・・・!」
アテナがインパルスとミネルバを見て毒づく。
「マキ、あなたはミネルバを攻撃して。ミネルバがいる限り、インパルスは持久戦で有利になってしまう・・」
「またいいとこどりなの、アテナ・・まぁ、いいけどね・・」
指示を出すアテナにマキが肩を落とす。
「いいよ、やってやる・・艦を落とすのはパイロットとして清々しいものだからね。」
「油断しないように。ミネルバの上に1機、MSがこちらを狙っているわ・・」
笑みをこぼすマキにアテナが言いかける。ソラの乗るブレイズザクファントムがビームライフルを構えていた。
「だったらそいつもまとめて吹っ飛ばす!」
マキが言い放ち、マグナがレールガンの砲門をミネルバの上にいるブレイズザクファントムの足元に向けた。
「のこのこ出てきたことを後悔させて・・・!」
マキがレールガンを発射しようとした。そこへミネルバのビーム砲「トリスタン」から放たれたビームが飛んできた。
「くっ!」
マキが毒づき、マグナが後ろに下がってビームをかわす。ブレイズザクファントムも続けてビームライフルを発射して、マグナを攻め立てる。
「パワーと砲撃重視に見えるのに、スピードもある・・・!」
「焦らないで、ソラ。ミネルバから離れずに、こちらに攻撃を通させないことを優先するように。」
呟きかけるソラにミーナが呼びかける。ソラは落ちつきを払って、マグナの動きを見据える。
「大きさによる狙いやすさから、向こうのほうが有利のはずよ。油断すれば撃墜される・・ソラ、あなたの腕も命運を分けることを、忘れないで・・」
「了解・・・!」
ミーナから忠告を言い渡されて、ソラが緊張を感じながら頷いた。
「あんなのになめられてたまるかっての・・・!」
マキがいら立ちを募らせ、マグナがミネルバに砲撃を仕掛ける。しかしミネルバとブレイズザクファントムの射撃の連続で、マグナは攻撃がままならなくなっていた。
ソードインパルスを駆り、ルナマリアがクレッセントに攻撃を仕掛ける。ソードインパルスが対艦刀「エクスカリバー」を振りかざすが、クレッセントが素早くかわす。
「攻撃力は上がるがスピードはフォースインパルスよりは若干劣る。こちらはそのほうがかわしやすい。」
アテナがインパルスの動きを慎重にうかがっていく。
「スピードはクレッセントのほうが上回っている・・・!」
アテナが目つきを鋭くして、クレッセントがビームサーベルを構えて、インパルスに向かっていく。
「このっ!」
ルナマリアが抵抗して、インパルスがエクスカリバーを振りかざす。クレッセントが飛び上がってエクスカリバーをかわす。
「うっ!」
クレッセントが着地と同時に振りかざしたビームサーベルで、インパルスの左腕が切り落とされた。
「もらった!」
アテナが言い放ち、クレッセントが右手のビームサーベルを突き出す。インパルスがとっさにエクスカリバーを振りかざして、クレッセントの右腕を切り裂いた。
「油断した・・でも次は・・!」
アテナが呟き、クレッセントが左手のビームサーベルをインパルス目がけて突き出した。
そのとき、一条のビームが上空から飛び込んできた。アテナが気づき、クレッセントがインパルスから離れてビームをかわす。
「また援軍・・・!?」
「あれは・・・!」
アテナとルナマリアが声を上げて、ビームの飛んできたほうに目を向ける。その上空には1機の機体がいた。
「まさか・・ジャスティス・・・!?」
上空にいる赤い機体「∞ジャスティス」にアテナは目を疑っていた。ジャスティスは強力な戦闘力を備えたMSの1機であることを、彼女は分かっていた。
“大丈夫か、ルナマリア!?”
「アスラン・・あなたも来ていたのね・・・!」
呼びかけてきた声にルナマリアが答える。
アスラン・ザラ。かつてザフトに所属していたMSパイロットで、かつてルナマリアの上官だったこともある。現在はオーブ軍に所属している。
「プラントからの要請を受けて、ここアーモリースリーに来た。戦闘の鎮静化のため、ザフトに協力する。」
「ジャスティス・・アスラン・ザラ・・最強のパイロットが、ここで出てくるとは・・・!」
ルナマリアとミネルバに呼びかけるアスランの登場に、アテナが焦りを覚える。
「ジャスティス・・あんなとんでもないのが出てくるとは・・・!」
マキもジャスティスを見て歯がゆさを浮かべる。だが彼女はすぐに不敵な笑みを浮かべてきた。
「アイツを仕留めれば、名を挙げられるってものよ!」
「いいえ、今日は撤退する・・」
ジャスティスを仕留めようとしたマキに、アテナが呼びかける。
「ジャスティスは別格の実力を備えている。私たちが束になっても勝てるとは・・」
「そんなことは・・・!」
「それに、ジャスティスがいるということは、ヤツもいる可能性が高い・・・」
アテナに言われてマキが渋々聞き入れることにした。
「仕方ない・・・!」
クレッセントとマグナがエリアD2から引き上げていった。
「オレが2機を追跡する。ルナマリアたちは負傷者の救助を。」
「分かりました、アスラン。」
アスランの呼びかけにルナマリアが頷く。アスランの駆るジャスティスがクレッセントとマグナを追跡しようとした。
そのとき、ジャスティスに向かってビームが飛んできた。アスランが反応して、ジャスティスがビームをかわす。
「何っ・・!?」
この一瞬にアスランが驚きを覚える。ジャスティスを狙って射撃してきたのは、アオの乗るブレイズザクファントムだった。
「ジャスティス・・アスラン・ザラ・・・この裏切り者!」
アスランに対して感情をあらわにするソラ。ミネルバにいたブレイズザクファントムが、ジャスティスに向かって飛び出していった。
次回予告
今ある平和。
しかしそれはまやかしでしかないのか?
停戦を導いた自由と正義の存在。
それを憎む心もまた存在していた。
真の平和、見定めろ、ザク!