GUNDAM WAR

-Destiny of Shinn-

FINAL PHASE「果てなき運命」

 

 

 レジェンドとの戦いで損傷しながらも、デスティニーはインパルスとともに地球へ降下する。シンたちは満身創痍で、大気圏の突破に踏み切った。

 デスティニーが腕を掲げて、ビームシールドを最大出力で展開した。ビームシールドがデスティニーとインパルスを守れるだけの大きさになった。

 シンが感覚を研ぎ澄ませて、わずかでも異常が出たら対処できるようにした。ルナマリアも同様に警戒して、ステラが彼女にすがりつく。

 デスティニーがインパルスを連れて、大気圏に突入した。本来なら大気圏突破に耐えられるはずのデスティニーだが、損傷した部分から負担がかかっていく。

(もう少し・・もう少しだけ耐えてくれ、デスティニー・・!)

 デスティニーを信じて、シンが集中力を高める。デスティニーの損傷部分から火が噴こうとしていた。

 そのとき、デスティニーとインパルスが大気圏を突破した。損傷が深まる前に、2機は地球にたどり着くことができた。

「やった・・みんな、大気圏を抜けられた・・・!」

 シンがひと息ついて、インパルスに目を向けた。

「私たちも大丈夫よ、シン・・すぐに座標を確認するわ・・」

 ルナマリアが安心して、インパルスのレーダーをチェックする。

「オーブ本島とオノゴロ島の間よ・・オーブ政府はまだ立て直しができてなくて、軍も動ける状態にないけど・・」

「オレはもう、オーブをこれ以上追い詰めるつもりはない・・悪いのはアスハやオーブ政府の連中で、他の人は悪くない・・・」

 自分たちの現在位置を告げるルナマリアに、シンが自分の考えを口にする。

「オノゴロへ行こう。そこなら落ち着けるし、少しは身を隠せるはずだ・・」

「シン・・でも、そこはシンの・・・」

 呼びかけるシンに、ルナマリアが当惑を覚える。

「今はこだわっている場合じゃない・・身を隠せる場所で思い当たるところは、この近くではあそこぐらいだ・・・」

「シン・・・分かった。行きましょう、シン・・」

 シンの意思を聞き入れて、ルナマリアが頷いた。デスティニーとインパルスが移動して、オノゴロへ向かった。

 

 デスティニーとインパルスの動きを、ミネルバとボルテールは捉えていた。

「デスティニー、インパルス、ともに大気圏を突破。オーブ領空に入ったところで反応が消えました・・」

 メイリンがレーダーを見て、タリアに報告する。シンたちが離れていくことに、メイリンは安心と不安の入り混じった気分を感じていた。

「分かったわ・・私たちは本艦の修復と休息に専念しましょう・・」

 タリアが頷いて、アーサーたちに指示を送る。

「メイリン、心配なのは私たちも同じよ。でも今は、シンとルナマリアを信じましょう・・」

「艦長・・・はい・・」

 タリアから激励を送られて、メイリンが気分を落ち着かせていく。

「ボルテールから通達が・・“我らはメサイアに向かい、デュランダル議長から真意を問いただす”とのことです。」

 他の通信士が、ジュール隊からの連絡を受けて報告する。

「“了解した”ということと、こちらがプラントに戻ることを伝えて。」

「艦長・・分かりました。」

 タリアの言葉を聞いて、メイリンはボルテールへ返信した。

「私たちはこのまま、プラントへ戻ります。」

「はい、艦長・・」

 タリアが改めて指示を出して、アーサーが答えた。ミネルバはプラントに戻り、修繕を受けることになった。

 

 ジェネシスがデスティニーに破壊され、攻撃の手立てを失ったメサイアに、イザークたちが乗り込んだ。彼らに包囲されたギルバートだが、追い詰められた様子を見せていなかった。

「私を拘束すれば、世界は再び混迷へと落ちる。ロード・ジブリール、クライン派という脅威は去ったが、彼らのような脅威を生み出さないための手立ても必要となる。」

 ギルバートがイザークたちに自身とデスティニープランの必要性を告げた。

「だからと言って、人間の意思や選択を踏みにじるシステムを押し付けられることを認められるか!我々ザフトだけでなく、世界全てを貴様の思い通りにするつもりか!?

 しかしイザークはギルバートの言葉を拒絶し、問い詰める。

「このデスティニープランは、人類存亡を賭けた最後の防衛策。それに逆らうことは、人類全てを敵に回すということだ。」

「そう言い張るなら、貴様のその行為は、その人類の意思の敵に回っているということだ!」

 デスティニープランの否定を許さないギルバートを、イザークが避難する。

「我々軍人は、上官の命令が絶対だ・・だが、その場や状況に対して臨機応変に対処するには、戦場にいる自分自身で判断しなければならない!」

「その必要はなくなる。デスティニープランによって、戦争が起こることもなくなるのだから・・」

「貴様・・そこまで世界を自分の思い通りにしたいのか!?

 考えを変えないギルバートに、イザークが激高する。

「オレたちは人間だ!戦いだけでなく、それ以外の生き方まで決められたのでは、人間の生き方ではない!」

「全ては世界の悲劇を終わらせ、繰り返させないためだ。それは、人類全ての願いだ。」

「自分で生き方を選ぶことも、人類の願いだ!他のヤツはそいつを後押ししてやるだけで十分だ!」

 ギルバートとデスティニープランを、イザークは真っ向から否定する。

「人は神ではない。貴様もオレたちも、神のようなマネをしても、何もかも思い通りになるわけではない・・!」

「だとしても、我々が人類を導かなければ、混迷は続き、繰り返される・・」

 イザークから苦言を呈されても、ギルバートは自分の意思を貫こうとする。

「ギルバート・デュランダル、貴様の身柄を拘束する!」

 イザークが言い放ち、ジュール隊の兵士たちがギルバートを拘束した。ギルバートの部下である兵士たちが抵抗しようとしたが、他の兵士に銃口を向けられ、手出しができなくなる。

「世界を正しく導けるのは私だけだ。後悔することになるぞ。君たちもシンも・・」

「生きながら死んでいるよりはマシだ・・・!」

 捕まっても自分の意思を曲げないギルバートに、イザークが鋭く告げる。ギルバートが兵士たちによって連行された。

「デスティニーとインパルスの行方は・・!?

「オノゴロで反応が消えました。その付近に潜伏したか、エネルギーを抑えて行動しているか・・」

 イザークが問いかけて、兵士の1人が報告する。

「アイツらはほっといてもいいんじゃないか?アイツらもオレたちも、デュランダル議長に反旗を翻しちまったんだから・・」

「アイツらはザフトの離反者だ。目を離すわけにいくか・・!」

 ディアッカが投げかけた問いかけに、イザークが不満げに言い返す。

「了解、隊長。監視するように連絡しておくさ。」

 ディアッカが気さくな態度のまま答えて、ボルテールに戻っていった。

(デスティニーたちに関しては、グラディス艦長が配慮するだろうな。オレたちはデュランダル議長の監視と訊問に集中することになる・・)

 これからのことを考えて、イザークはため息をついた。

 

 ギルバートが拘束されたことで、デスティニープランの中断が余儀なくされた。メサイアもジュール隊の監視で、修復ができない状態にあった。

 ミネルバはタリアとアーサーが応答をしただけで、他の処分はなかった。

 ギルバート以外のプラント最高評議会のメンバーは、レクイエムで被害を被ったプラントの修繕と住民のケアへの対応に追われて、デスティニープラン以外の今後の政策を練れない状態にあった。

 行動の自由を制限されているギルバートだが、自分がデスティニープランによって世界をまとめるという意志に揺らぎはなかった。

 

 地球へと逃れたシン、ルナマリア、ステラはオノゴロの小さな家に身を隠していた。ヨウラン、ヴィーノ、メイリンが密かにシンたちの元を訪れ、家財の確保と機体の整備をしていた。

「ありがとう、みんな・・オレたちだけだったら、どうにもならなかったかもしれない・・」

「相変わらず自分だけで突っ走るんだから、シンは・・」

 感謝するシンにヴィーノが呆れた素振りを見せる。

「プラントとザフトはあれからどうなった?デスティニープランが機能している感じはないみたいだけど・・」

「メサイアの被害が大きくて、デュランダル議長も捕まったままだ。プラントも修繕が続いている・・」

 シンが状況を聞いて、ヨウランが深刻な面持ちを浮かべて答える。

「お前たちを捕まえろとかの処罰の命令は出ていない。グラディス艦長もお前たちが復隊できるように取り計らっている。」

「そうか・・艦長やみんなに、迷惑を掛けっぱなしだ・・・」

 ヨウランやタリアたちに気遣われていると思い、シンが物悲しい笑みを浮かべる。

「それで、グラディス艦長がこれを渡してほしいって・・」

 メイリンがシンに1つのチップを渡した。映像が収録されたものである。

「後で3人だけで見て・・艦長も私たちも、お姉ちゃんたちのこと、信じて待ってるから・・」

「ありがとう、メイリン、みんな・・艦長にも、よろしく伝えておいて・・」

 言いかけるメイリンに、ルナマリアが微笑んで感謝した。

「それで、レイはどうしてるんだ・・?」

 シンがヨウランたちにレイのことを聞いた。

「艦長のそばについているよ。ほとんど艦長と行動を共にしている。」

「悪い言い方をすると、見張りをしてるって感じかな。レイ、議長にかなり入れ込んでたから・・」

 ヨウランとヴィーノが表情を曇らせてから答える。

「レイは議長を信じろって言っていた。オレも議長を信じたかった・・でも、生き方を何もかも決められる世界を作ろうとしていたなんて・・・」

 シンがレイとギルバートのことを考えて、思いつめていく。

「その世界なら確かに戦争は起きない・・だけど喜びも幸せも感じられない・・それで本当に平和だと言えるのかって・・」

「辛いことや悲しいことがたくさんあった・・こういうことが2度と起きてほしくないって思うこともある・・でもそう思う気持ちがあったからこそ、強くなれた気がした・・」

 シンに続いてルナマリアも正直な思いを口にする。

「いくら争いのない平和な世界でも、この気持ちは忘れたくない・・」

「ま、自分がどう生きたいかを選ぶぐらいは、好きであってほしいかな。」

 ルナマリアの言葉を受けて、ヴィーノが気さくに言う。

「シンたちのことは、グラディス艦長に言っておくから・・」

「また何かあったら連絡をするよ。」

 ヨウランとヴィーノが言いかけて、シンが微笑んで頷いた。

「お姉ちゃん、また戻ってくるのを待ってるからね・・」

「うん。メイリンも元気でいて・・」

 メイリンとルナマリアが再会を約束して、抱きしめ合った。

「今度はステラちゃんとちゃんと会わせてくれよな、シン。」

「あぁ。ヴィーノたちのこと、ステラに話しておくよ。」

 ヴィーノが気さくに言って、シンが微笑んで答えた。ヨウラン、ヴィーノ、メイリンがプラントへと戻っていった。

 

 家の中で安静にしていたステラだが、シンとルナマリアが戻ってきたところで目を覚ました。

「シン・・ルナ・・どこに行っていたの・・・?」

「友達が来てたんだ・・ステラ、休んでいたから起こさなかったんだ・・ゴメン・・」

 ステラが声を掛けて、シンが説明して謝る。

「ううん・・シンとルナ、ステラのことを気遣ってくれた・・・」

 ステラが顔を横に振って、シンたちに微笑んだ。

「それでステラ、具合はどうかな・・?」

「うん・・もう痛くないし、怖くない・・・」

 ルナマリアが問いかけて、ステラが頷いた。

「ステラ、お散歩に行きたい・・外にお出かけしたい・・・」

 ステラが外に目を向けて、シンたちにお願いをした。

「外へ行くのは怖くないの?まだ世界や宇宙は安心できる状況ってわけじゃないんだよ・・」

「大丈夫・・シンとルナが一緒だから・・・」

 ルナマリアが心配すると、ステラが彼女とシンに信頼を寄せてきた。

「分かった。丁度行きたいところがあったから、ステラも一緒に行こう。」

 シンがステラのお願いを聞いて微笑んだ。

「シン、行きたいところって、もしかして・・・」

 ルナマリアが思い当たるところを思い出して、シンに言いかける。

「ステラもきっと受け止められるよ。オレが・・いや、オレたちがそばについてるから・・」

 シンがステラの心とルナマリアたちの優しさへの信頼を口にした。

「そう思っていてくれて嬉しいわ、シン・・私も、あなたやステラのことがほっとけないと思ってるんだから・・」

 感謝するルナマリアに、シンとステラが微笑んだ。

「シンとルナとお出かけする・・嬉しい・・・」

 ステラが喜び、シンは安らぎを感じていた。

 

 その日の夜、シンとルナマリアはステラが眠ったのを見届けてから、メイリンから渡されたチップをパソコンに挿入した。チップに収録された映像が、画面に映った。

“シン、ルナマリア、久しぶりね。あなたたちに負担を掛けてばかりで、表立って助けることもできず、申し訳ないと思っている・・”

 タリアが映像を通して、シンたちに呼びかけてきた。

“あなたたちがもしも、本当の平和のために戦うつもりでいるなら、ザフトに戻れるように取り計らうつもりよ。デュランダル議長に従うだけではなく、自分の意思で戦う人間として。”

「グラディス艦長・・」

 タリアの気遣いに、シンとルナマリアが心を打たれた。

“次にメイリンたちが行ったときに、返事をしてくれると嬉しいわ。”

 タリアの話が続き、シンたちが頷いた。

“それと1つ、あなたたちにお願いがあるの・・私には子供がいるの。男の子よ。一緒にその場所について記した紙があるから、いつか会いに行ってあげて・・”

 タリアが自分の子供のことを話して、シンとルナマリアが戸惑いを覚える。ザフトの立場と現状から子供に会いに行けないことを、シンたちは察した。

「あそこの他にも、行くところができたわね・・」

「あぁ・・ステラとも、仲良くなれるといいな・・」

 ルナマリアが言いかけて、シンがステラのことを気に掛けた。

 

 一夜が明けて、シンとルナマリアはステラを連れて外へ出かけた。まず向かったのは、オーブで戦死した人たちの墓標だった。

 人の死に直面することでステラが不安になることを、シンとルナアリアは危惧していた。しかしステラは墓標を見ても、悲しみは感じていたが、大きな不安定になることはなかった。

「シン・・ここは・・・?」

「お墓だよ・・3年前に、このオーブで亡くなった人の名前が書かれている・・・」

 ステラが聞いてきて、シンが思いつめた面持ちで答える。人の死に聞かされて不安になるも、ステラは混乱することはなかった。

「墓標だけが残っている・・オレが前に来たときに残っていた花も枯れて、ほとんど残っていない・・」

 シンが周りに目を向けて、深刻さを募らせる。

 ユニウスセブン破砕の隕石の落下で起こった津波を被り、墓標の周りで咲いていた草木は枯れることになった。またオーブは政府が壊滅して国としての機能が麻痺しており、修繕に手が及んでいない。

「オレたちの戦いの犠牲だ・・オレたちと、デュランダル議長とロゴス、オーブやキラたちが、この悲劇を作ったんだ・・・」

「シン・・・」

 自分たちの戦いの責任を痛感するシンに、ルナマリアが戸惑いを覚える。

「今度こそ、戦いのない世界、その上で人の意思も存在する世界を目指さなくちゃいけないんだ・・管理された世界でも、綺麗事に支配された世界でもなく・・」

「議長の築く世界でも、オーブやクライン派が作る世界でもない・・・」

 自分たちのやるべきことを口にするシンに、ルナマリアが頷いた。

(そうだ・・もう誰かに一方的に振り回されたりはしない・・・)

 シンが心の中で呟いてから、墓標に視線を戻した。その前にキラ、アスラン、ラクス、カガリの幻が現れた。

(キラ、アスラン、ラクス・クライン、アスハ・・・!)

 キラたちの幻を目の当たりにして、シンが目つきを鋭くする。

「あなた方はこれからも生き続けるのですね・・夢も希望も淀みの中にあるこの世界の中で・・・」

 ラクスが悲しい表情でシンに声を掛ける。

(オレたちが戦いのない世界を目指す・・誰かに決められた未来を進むつもりはないが、アンタたちの綺麗事を認めるつもりもない・・・!)

 シンがラクスに対して、自分たちの意思を告げた。彼はラクスの考えも受け入れないつもりでいた。

「シン・・私たちは、取り返しのつかない過ちを犯してしまったというのか・・・!?

 カガリが罪の意識を感じて、シンに問いかける。

(過ちならオレたちもした・・その罪の重さをオレたちは思い知ったけど、アンタたちはそれを分かっていない・・分かった気になって、自分勝手に戦った・・・!)

 カガリやキラたちの言動を咎めるシン。

「君はここで僕たちに言ったね。“いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす”って・・」

 キラが初めてシンと会ったときのことを思い出す。

「もしも生きていたなら、いくら吹き飛ばされても、僕たちは何度でも花を植えるつもりだった・・」

(違う・・やっぱりアンタは、何も分かっていない・・・!)

 自分の考えを告げるキラに、シンが反発する。

(ただ花を植えるだけじゃダメだ・・争いで花が吹き飛ばされることが起きないようにしなくちゃダメだ・・そんな世界を目指さなくちゃならないんだ・・・!)

 自分たちのやるべきことを理解して、シンがキラたちに告げる。

「それがお前たちの戦いなのか・・・」

 アスランが真剣な面持ちで言いかけて、シンが小さく頷いた。

「誰もが間違いを犯した・・オレたちもお前たちも・・シン、お前は自分を見失うな・・大切なものを傷付けるようなことは、絶対にしてはいけない・・・」

(それは、アンタたちに言われなくても分かっている・・オレたちが見つけてみせる・・本当に戦いのない世界を・・・)

 アスランの投げかける言葉に答えて、シンが自分たちの決意を告げた。

「僕たちはもう、この世界にいてはいけなかったのかな・・・」

(アンタが世界を混乱させてたんだよ・・戦いを終わらせるつもりになっていて、間違いを犯してたんだよ・・取り返しがつかなくなるまで・・・)

 悲しい顔を浮かべるキラを、シンが責める。キラ、オーブ、ラクス。綺麗事を並べるばかりの言動を、シンは許せなかった。

(アンタたちにも議長にも惑わされない・・オレはオレの意思で、戦いのない世界を見つけ出す・・・!)

「そうか・・・オレたちは見ているぞ。お前のこれからを・・・」

 揺るぎない意思を示すシンに、アスランは言葉を投げかけた。アスランとキラたちがシンの前から姿を消した。

(必ず見つけ出してみせる・・オレが・・いや、オレたちが・・・)

 キラたちに対する言葉を送ってから、シンはルナマリアとステラに目を向けた。

「シン、どうしたの・・?」

「ううん。何でもない・・今までの戦いのことを思い出してたんだ・・」

 ルナマリアが声を掛けて、シンが落ち着いて答えた。

「オレたちはまだ、戦うことでしか戦いを止めることができない・・何が戦いのない世界になる答えなのかも分からない・・だけど必ず見つける・・オレたちの持てる力で・・・」

 自分たちの置かれている立場と決意を確かめるシン。

「みんなやステラが、安心して暮らせるあったかい世界を・・・」

「シン・・ステラも、シンと一緒にがんばるよ・・シンが、ステラのことを助けてくれたから・・」

 ステラもシンに向けて決意と思いを口にする。

「でも、ステラは戦うことはない・・イヤなものに関わる必要なんて・・・」

「イヤじゃないよ・・シンを守ることは・・シンの守りたいものを、ステラも守る・・・」

 困惑するシンに、ステラも正直な気持ちを伝えた。

「ステラも、シンの力になりたいと思っているのね。」

 ステラの気持ちを聞いて、ルナマリアが頷いた。

「私たちもグラディス艦長たちも、何が正しいのかはまだ分からない・・それでも、私たちの中に、大切なものを守りたいって気持ちはあるから・・」

「そのためにどうするのがいいのか・・オレたちは、それを考えて行動しなければならないんだ・・」

 ルナマリアの言葉を受けて、シンが自分たちのやるべきことを口にする。

「その中には、グラディス艦長の頼みを聞くことも、オレたちのやることだ・・」

「シン・・艦長のお子さんに会いに行くのね。」

 シンの言葉を聞いて、ルナマリアがタリアの願いについて聞く。

「行こう、ルナ、ステラ・・その子のいるところへ・・」

 シンが声をかけて、ルナマリアたちとともに慰霊碑を後にする。その途中、シンはポケットから眉の携帯電話を取り出した。

(マユ・・父さん、母さん・・オレは戦うよ・・平和を壊そうとする相手と・・)

 マユたちにも決意を告げて、シンは携帯電話をしまった。

 

 戦争によって家族を失ったシン。

 力を求めてザフトに入った彼は、様々な人との出会いや対立を得て、強くなっていった。

 ギルバートの示す世界とキラ、アスランたちとの対峙の中、シンは過去と運命を背負い、今を守り、自分の選んだ未来を進むことを決めた。

 キラたちを討ち、ギルバートとも袂を分かったシンは、ルナマリアやステラ、タリアたちと本当の平和のために力を使う決意を固めた。

 誰もが幸せでいられて、争いのない世界。その答えはまだ見つかっていない。

 

 シンたちの戦いは続く。

 自分の意思で運命を背負った彼の、平和への戦いは。

 

 

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