Drive Warrior Gears

Episode25「確かな明日へ」

 

 

 フロンティアに動きがあったのを、ミュウたちが目撃した。
「動き出したよ!地球に向かってきてる!」
「逃げるんじゃなくて、突撃してくるんじゃ・・・!?」
 ウィザードとウィッシュがフロンティアに対して緊張を覚える。
「ブレイドたちに知らせて。あの艦を止めないと・・!」
 ミュウがウィザードたちに呼びかけて、フロンティアの地球突入の速度と時間を計算していく。
(あの艦がスピードを上げて地球に落ちてきたら、その地点を中心にして、大きな被害が出る・・結界で閉じ込めようにも、あれだけの大きな艦を封じ込めるのは不可能・・!)
 フロンティアの地球落下に、ミュウは強い危機感を感じていた。
「ミュウ、フロンティアの落下は・・!?」
 ブレイドが駆けつけて、ミュウに問いかけてきた。
「あと10分で地球の大気圏に侵入するわ!その前に艦を止めるか、破壊するしかない・・!」
 ミュウがフロンティアの落下時間を計算して、焦りを募らせる。
「艦に乗り込んで、落下を止めるしかない・・せめて地球から遠ざけなければ・・ミュウ、転送の準備を!」
「ムリよ!艦はスピードを上げて動いているのよ!転送先が定まらないわ!」
 フロンティアに乗り込もうとしたブレイドに、ミュウが声を荒げて反論する。
「あれだけの質量を真っ向勝負で押し返すことこそムリだ!中に入って止めるしかない!」
「それでも、動いているところへ転送先を定めるには時間がかかりますよ・・!」
「あたしらにだってできることとできないことがあんだよ、もう!」
 苦言を呈するブレイドに、ウィッシュとウィザードも反論する。
「それで星が滅んでいいってわけじゃない・・みんな、納得できるわけないですよね・・」
 アリシアもやってきて、ミュウたちに声を掛けてきた。
「アリシア、もういいのか・・?」
「うん・・緊急事態だから、完全回復まで待っていられない・・・!」
 ブレイドが声を掛けて、アリシアが小さく頷いた。
「アリシア、オレと一緒に戦艦に乗り込んで止める・・大気圏突入までに止められなければ、地球にも被害が出る・・!」
 ブレイドが状況を話して、アリシアが頷いた。
「かなりムチャクチャなミッションになるけど、やってみるわ・・宇宙に出てしまう危険があること、覚悟しておいて・・!」
「それを乗り越えなければ、全て終わりだ・・・!」
 ミュウからの忠告を聞いて、ブレイドが頷いた。
「私も行きます・・!」
 ヒカルもタクミと一緒にやってきて志願をしてきた。
「ヒカルちゃん!?」
「まだ無理できる体じゃないだろ!もうちっと休んでろ!」
 ミュウが驚き、ウィザードがヒカルに怒鳴りかかる。
「オレも一応休めって言ったけど、言うこと聞かなくて・・」
 タクミが言いかけて、ヒカルに目を向けてから苦笑いを浮かべた。
“I am not in good health.If you use Drive Charge, your body will become more anxious.(体調は万全ではありません。ドライブチャージを使えば、体への不安が大きくのしかかります。)”
 カイザーがヒカルに向けて警告を送った。
「こればかりはホントに最後の手段・・みんなを守れるなら自分がどうなってもいいとまでは思っていない・・」
 ヒカルがカイザーに答えて、タクミに目を向けた。タクミやアリシアたちだけでなく、ガイやリンたちのことを思っていた。
「私たちの帰る場所を守って、必ず無事に帰る・・それが、私たちの願い・・!」
「そうだな・・親父たちも帰りを待ってるからな・・」
 ヒカルの言葉を聞いて、タクミも笑みをこぼした。
「ヒカルちゃんとタクミくんまで・・・」
 ヒカルたちも揺るぎない意思を示していることに、ミュウは気まずくなっていた。
「もうやるしかなさそうですよ・・ヒカルさんたちだけで飛び出していきそうです・・」
「ミュウ、一か八か、戦艦に転移先を設定しようぜ!」
 ウィッシュとウィザードがミュウに呼びかける。
「分かったわ・・でも、命の保証はできないからね・・!」
 ミュウがヒカルたちの突入を了承して、転送先を定めようと、落下するフロンティアを注視する。
「ヒカル、アリシア、タクミ、突入の準備だ・・!」
「はい・・!」
 ブレイドの呼びかけにヒカルが答える。2人はタクミ、アリシアとともに転移装置の上に来た。
 ウィザードとウィッシュ、ミュウがフロンティアに対して転送先を定めようとする。
「今よ!座標固定!転送!」
 ミュウが転移装置を起動させて、ヒカルたちを転移させた。
「ヒカルたちは!?」
 ウィザードが声を掛けて、ウィッシュがレーダーを注視する。
「いました!艦の中央に4人ともいます!」
 ヒカルたちの反応をウィッシュが確認した。
「ブレイド、聞こえる!?ヒカルちゃん、アリシアちゃん、タクミくん!」
 ミュウがヒカルたちに向かって呼びかける。
“ミュウ、聞こえるぞ・・オレたちの位置は分かるか・・!?”
 ブレイドの声が本部に響く。しかしうまく念話を捉えられない状況下にあり、声にはノイズが混じっていた。
「ブレイド、無事に着けたのね!・・そこは艦の中心で、落下方向に艦首があるわ!」
「そこで艦をコントロールできるはずです!」
 ミュウとウィッシュがブレイドたちに指示を出す。
“分かった・・すぐに向かう・・!”
 ブレイドがミュウたちに答えて、ヒカルたちとともに移動を開始した。

 フロンティアが地球へ落下する中、リオは小型艇に乗り込んだ。
「これで脱出すれば、私は逃げられる・・ロードサイドもフロンティアの始末で追いかけてくるどころじゃない・・!」
 無事に脱出できると確信するリオ。
「リオちゃん!」
 そこへ声がかかって、リオが緊迫を膨らませた。彼女の小型艇の前に、ヒカルとタクミが現れた。
「ヒカル・・タクミ・・・!」
「リオちゃん・・私たちと一緒に戻ろう・・!」
「そうだ・・これ以上罪を重ねるな・・!」
 緊迫を覚えるリオに、ヒカルとタクミが呼びかける。
「罪?マスター・コスモが世界をよくしてくれるはずだったのに・・それをアンタたちが邪魔してくれて・・!」
 リオがヒカルたちへの不満を浮かべて、小型艇の発進に備える。
「これで終わるつもりはない・・必ずアンタたちや地球に逆襲してやるんだから・・!」
「どうしてそこまで、地球のことを・・お前だって、この地球で生まれたんだろうが!」
 敵意をむき出しにするリオに、タクミが憤りを感じていく。
「もうウンザリしてるのよ・・何も魅力を感じないこの世界も、そこにいる人たちも・・!」
「お前・・地球人なのに、地球を裏切って、オレたちを見限るのかよ!?」
 不満を募らせるリオに、タクミも憤って体を震わせる。
「マスター・コスモなら私をすばらしい世界に導いてくれる・・だから私は従ったの・・ヴァンフォードに・・それを、私は満足してる・・・!」
「利用されて切り捨てられるだけだぞ・・ヴァンフォードの他のヤツらだって、コスモに力を奪われて・・!」
「地球の連中にいいように振り回されるよりはいい!」
「リオ・・そこまでヴァンフォードに、コスモに味方したいのかよ・・・!?」
 コスモを慕い続けようとするリオに対し、タクミが怒りを抑えるのに必死になっていた。
「何を言っても聞く耳を持たないっていうなら・・オレが容赦なく、お前を連れ戻す!」
「私はアンタたちの思い通りにはならない!私を思い通りにできるのは、マスター・コスモだけなんだからね!」
 怒鳴りかかるタクミに言い返して、リオが小型艇を起動させた。
「行かせるか・・ギャラクシー!」
 タクミがギャラクシーを起動して手にして、小型艇に向かって振りかざす。船体に傷が付いて、小型艇が傾いた。
「ぐっ!」
 発進することができなくなり、リオがうめく。彼女が小型艇から飛び出して逃げようとするが、タクミに腕をつかまれた。
「逃がさないぞ・・お前が行くのは、ロードサイドだ・・!」
「放せ!私は、こんな世界に閉じ込められるわけにはいかないんだよ!」
 鋭く言うタクミにリオが怒鳴る。手を振り払おうとする彼女を、タクミが力を入れて放さないようにする。
「このっ!」
 リオがいら立って、タクミに打撃を仕掛けようとした。タクミがとっさにギャラクシーの刀身をリオの体に叩きつけた。
「うっ・・!」
 リオが意識を失い、タクミにもたれかかる。
「リオちゃん・・・」
 ヒカルがリオを見つめて、深刻さを募らせていく。
(ヒカル、タクミ、この艦を止めようと試みたが、大気圏から宇宙へ向かうことはできない・・!)
 ヒカルたちの脳裏に、ブレイドからの念話が届いた。
(止めるには破壊するしかない・・破壊と同時に脱出しないと、私たちもみんなも無事じゃいられない・・・!)
「そんな・・このデカイのを、猛スピードで一気に壊さないといけないのかよ・・!?」
 アリシアも続けて念話を送って、タクミが愕然となる。
「やるしかない・・やらないと、何もかも終わりだよ・・!」
 ヒカルが気を引き締めて、フロンティアを止める作戦に打って出る。
「私が全ての力を使って、この艦を破壊する。その瞬間に転移で脱出するよ・・!」
 ヒカルが覚悟を決めて、魔力を集中しようとする。
「待て、ヒカル!ちょっとでも遅れたら、お前も吹き飛んじゃうぞ!」
「それでもやるよ・・遅れずにやり遂げて、地球に帰ってみせる!」
 慌てて止めに入るタクミだが、ヒカルのこの意思は変わらない。
「だったらオレも一緒だ!離れ離れになるなんてイヤだぞ!」
 タクミがヒカルについていくことを心に決める。
「タクミ・・それだとタクミが・・・!」
「ヒカルは強情なくせに、他のヤツの強情を絶対に止めようとするからな・・だったらオレも無理やりついていく・・ギリギリになったら、お前を首根っこつかんででも連れ帰るぞ!」
 心配の声を上げるヒカルに、タクミが意地を見せる。彼の強い意思に対して、ヒカルは反論できなくなる。
「ガンコなのは、みんな同じだってことか・・」
 ヒカルがため息をついてから、タクミと苦笑いを見せ合う。
「それじゃおしゃべりはここまでだ・・さっさと済ませて、地球に帰る!」
「そうだね・・ありがとう、タクミ・・ここまで付き合ってくれて・・・!」
 気を引き締めるタクミに、ヒカルが笑顔で感謝した。
(ブレイドさん、すみません・・リオちゃんを連れて、先に脱出してください・・・!)
 ヒカルが念話でブレイドに呼びかけた。
“お前たちだけを残して、オレたちだけ先に行くわけにいかないぞ、ヒカル、タクミ・・!”
“私たちも最後まで残って、みんな一緒に帰るよ・・・!”
 ブレイドとアリシアもヒカルたちとともに、最後まで残ってフロンティアを止めようとしていた。
「結局、みんなそろって帰ることになりそうだな・・」
「そうだね・・こうなったら、みんなで力を合わせて、みんなでミュウさんたちのところへ帰ろう!」
 タクミが苦笑を浮かべて、ヒカルが気を取り直して意気込みを見せる。
「リオちゃん、先に転移してもらって帰って・・私たちもすぐに戻るよ・・!」
 ヒカルがそう告げると、リオが光の柱に包まれた。
「やめて!そんなことをしても、私は諦めたりは・・!」
 拒絶しようとするリオだが、ミュウの操作による転移によって、フロンティアから出された。
「ブレイドたちと合流して、この艦を止めるぞ・・!」
「うん、タクミ・・!」
 タクミが呼びかけて、ヒカルが頷いた。2人は廊下に出てブレイド、アリシアと合流した。
「1度この艦の前に出て、一気に魔法を叩き込む・・」
「攻撃だけでなく、宇宙の真空から身を守る防護にも集中しなければならない・・わずかでも気を抜けば、オレたち全員無事ではいられないぞ・・・!」
 アリシアとブレイドが作戦と注意を確かめて、ヒカルとタクミが頷いた。
「タイミングを合わせて、一気に魔力を込めて、作戦を始めましょう・・!」
 ヒカルがタクミたちとともに意識を集中する。
“I form a barrier, but I can only maintain it for a short time.Destroy the ship in the meantime.(私が結界を張りますが、短時間しか維持できません。その間に艦を破壊してください。)”
「カイザー・・・ありがとう・・このワンチャンスで決めてみせる・・!」
 アドバイスを送るカイザーに、光が感謝して微笑んだ。
「タイミングを合わせて魔力を解放する・・その直後に外へ出て破壊する・・!」
 ブレイドの指示にヒカルたちが頷く。ヒカルたちが意識を集中して、ドライブチャージとカートリッジのロードを行った。
「今だ!」
 ブレイドの掛け声と同時に、ヒカルたちとともに転移してフロンティアの前に出た。カイザーが発している球状のバリアでブレイドたちは守られていたが、バリアは揺らいでいて、いつ消えてもおかしくない状態だった。
「溜めた魔力を、あの艦に一気に叩き込む・・!」
 ブレイドが指示を出して、ヒカルたちとともに構えを取る。
“Zanber form.”
 バルディッシュがザンバーフォームに変形して、光の刀身に稲妻のような魔力が集中していく。
「空刃一閃!」
“Vakuumklinge.”
 ブレイドがトランザムを振りかざして、鋭く速い真空の刃を放った。
「雷光一閃!プラズマザンバー!」
 アリシアがバルディッシュを振り下ろして、刀身から閃光を放出した。
「ギャラクシーメテオ!」
 タクミもギャラクシーを突き出して、刀身から閃光を放った。3人の魔力の光が、フロンティアに命中した。
(みんなの願いを、この1発で押し出す・・!)
「全力全開!グランドストライカー!」
 ヒカルが拳を繰り出して、集めていた魔力を押し出した。魔力の光がタクミたちの光を押して合わさり、フロンティアの艦首に突き刺さり艦体を貫いた。
 フロンティアの艦体が赤くなり、熱で膨張していく。
(爆発するぞ!ミュウ、早く転移を!)
“分かったわ!”
 ブレイドが念話で呼びかけて、ミュウが答えて転移を行う。バリアーが消失する直前に、ヒカルたちがフロンティアの前から消えて、ロードサイドの本部に戻された。
 フロンティアは爆発を一気に速めて、大気圏に入る直前で木っ端微塵に吹き飛んだ。散らばった破片は一部は大気圏の途中で燃え尽き、残りは宇宙へ飛んでいった。

 ミュウに呼び戻されたヒカルたちは、魔力を使い果して床に横たわっていた。
「ミ、ミュウさん・・・あの艦は・・・!?」
 ヒカルが顔を上げて、ミュウに問いかけた。
「大気圏の手前で吹き飛んだ。地上には被害は出てないわよ。」
「よかった・・・よかった・・・!」
 ミュウが微笑んで答えると、ヒカルが安心して再び大の字になった。
「みんな、一気に魔力を使い果したのですね・・」
「みんな、ホントにやってくれたな・・!」
 ウィッシュとウィザードがヒカルたちの活躍を素直に喜んだ。
「しばらく休むようにね。体も魔力も満身創痍なんだから・・」
「すまない、ミュウ・・世話を掛ける・・」
 注意を投げかけるミュウに、ブレイドが謝罪を送る。
「ミュウさん、リオちゃんは・・・?」
「独房に入っているよ・・メイちゃんと違って、あの子はヴァンフォードに、コスモに心から従っていたんだから・・」
 ヒカルがリオのことを聞いて、ミュウが深刻な面持ちで答える。
「彼女はきちんと改心させないと、解放することはできない・・現時点だと、何をしでかすか分からないからね・・」
「はい・それは、分かっています・・・」
 ミュウの判断を受け入れ、ヒカルが覚悟を口にした。
「それじゃみんな、手当てするから医務室に来るようにね。」
「はい、ミュウさん・・」
 ミュウが呼びかけて、ヒカルが微笑んで答えた。彼女たちが医務室に向かって、休息を取るのだった。

 ヴァンフォードは壊滅し、支配されていた世界や星は解放された。ヴァンフォードの残党は、一部はそれぞれの場所で拘束され、残りは逃亡を図った。
 ロードサイドは体勢をすぐには整えられず、ヴァンフォードの残党の追跡まで手が回らなかった。
「見つけても捕まえられる手段が、今の私たちにはないからね・・」
「ブレイドさんたちにこれ以上ムリをさせるわけにいきませんし・・」
 ミュウが現状を考えてため息をついて、ウィッシュが深刻な面持ちを浮かべる。
「ちくしょう・・あたしも戦えたらなぁ~・・!」
 ウィザードが自分の無力さを痛感して、ため息をつく。
「今はそれぞれの世界のみんなに任せましょう。私たちが動くのはいざというとき。そのときに備えて、体を休めていましょう。」
「こっちはブレイドたち次第か・・あたしらはレーダーチェックだ!」
 ミュウが指示を出して、ウィザードが意気込みを見せる。ウィッシュも微笑んで、レーダーを注視した。

 コスモが倒れてから一夜が明けた。療養と睡眠を経たヒカルたちは、元気を取り戻していた。
「私とタクミはガイさんたちのところへ戻ります。うまくいいわけできるか分かんないけど・・」
 ヒカルがミュウたちに挨拶して、苦笑いを見せる。
「そこの話は私がしておこう。みんなにはうまくごまかしておく。」 
「ありがとうございます、ブレイドさん・・」
 ブレイドが助力して、ヒカルが感謝した。
「何か大きな動きがあったら、あなたたちに知らせるから・・多分、そのようなことにはならないと思うけど・・」
「分かりました。落ち着いたら、私たちから連絡しますので・・」
 ミュウの呼びかけにヒカルが答える。ヒカルたちはロードサイド本部から地球へと転移していった。

 アリシア、ブレイドとともにガイたちのレストランへ戻ってきたヒカルとタクミ。ヒカルたちはガイとリンから心配を掛けられた。
「みなさん、心配かけてしまってすみません・・」
「無事で何よりだ・・タクミもヒカルちゃんも・・!」
 ヒカルが謝って、ガイが安心の吐息をつく。
「2人に私たちの手伝いをさせてしまって・・その上時間が長引いてしまって、申し訳ありません・・」
「いえ・・タクミたちが力になって、むしろよかったです。」
 ブレイドも謝罪して、リンが感謝する。
「ガイさん、リンさん、リオちゃんから言伝があります・・急だけど、ここの仕事を辞めますって・・」
 ヒカルがリオのことをガイたちに伝えた。しかしヒカルたちは本当のことを話すことができなかった。
「リオさんが・・・本当に突然だな・・」
 ガイがリオのことを気に掛けて、リンとともに深刻さを感じていく。
 その後、リンがリオへの連絡を試みたが、電話に出なかった。
「仕方がないわね・・残念だけど、承諾するしかなさそうね・・」
 リンがリオのことを聞きいれて、ヒカルが小さく頷いた。
(もしも心を入れ替えてくれたら、リオちゃんもこれからずっと一緒にいられたのかな・・・?)
 リオを気に掛けるヒカルが、表情を曇らせる。その彼女の肩に手を乗せて、タクミが微笑みかけてきた。

 ヴァンフォードの騒動はほぼ沈静化された。コスモとの戦いで疲れ果てたヒカルたちも、万全まで体を休めることができた。
 ブレイドとアリシアがロードサイドの本部に戻り、ヒカルとタクミは地球に留まった。
 ヒカルたちはヴァンフォードと戦う前のような、張りつめた空気のない日常を過ごしていた。
「平和だな・・こんなに平和がすごいって、分かった気がするな・・」
「ずっと戦ってた気がするからね・・こうして大きく羽を伸ばせたの、久しぶりな気がする・・・」
 タクミとヒカルが大きく背伸びをして、安息を堪能する。
「でも、宇宙や他の世界は、まだ慌ただしいままなのかな・・?」
「分かんない・・もし何かあれば、ブレイドさんたちから連絡があるはずだ・・」
 ヒカルが投げかけた疑問に、タクミがのん気に答える。
「メイが生きていたのは嬉しかったけど・・和解はできていない・・・」
 ヒカルがメイのことを考えて、表情を曇らせていく。
「ヒカルの親友だったんだっけ?・・いつかまた会うことになるんじゃないか・・?」
「うん・・今度こそ、分かり合えると思う・・もうメイは、ギルティアの頂点に立つという野心は持っていない・・私に勝つことが生きがいになっている・・・」
 タクミに励まされて、ヒカルがメイへの思いを口にする。
「だったらその理由で、また会えるって可能性が高いな・・」
「うん・・もしまた勝負を仕掛けてきたら、私は全力で受けるよ・・・!」
 タクミに答えて、ヒカルがメイとの再会と再戦に臨んだ。
「とりあえず、今は今の生活を全力で過ごすだけだな。」
「うん・・張りつめた日々も辛いことも、もうおしまいにしたい・・・」
 タクミとヒカルが気持ちを切り替えて、同時に自分の両頬を手で叩いた。
「それじゃ、気晴らしに街を回ってみるか。」
「何かいいものが見つかったら買い物もいいかな。」
 タクミが気さくに言って、ヒカルが笑顔で答えた。2人は街へ繰り出して、休息を堪能するのだった。

 街に繰り出したヒカルとタクミは、賑わいを見せる街中を見て回っていた。その最中に、2人は同じく街に来ていたアリシアを見つけた。
「アリシアちゃんも来たんだね。」
「ブレイドたちから許可はもらったよ。何かあればすぐに連絡をしてくれるよ・・」
 ヒカルが喜んで、アリシアが微笑んで答えた。
「ありがとう、アリシアちゃん。それじゃ一緒に行こうね。」
 ヒカルがタクミ、アリシアを連れて、街中を巡った。
 洋服屋で新作の服を当ててみたり、食べ物屋を見ては目を輝かせたりして、ヒカルたちはいろいろなお店を回っていった。
 そしてヒカルたちは、街中のハンバーガーショップで休憩を取っていた。
「見て回るだけでも気分が晴れてくるね。」
「そうだな。気分転換するのには十分かな。」
 ヒカルが安心の笑みをこぼして、タクミが同意する。
「少し前まで大変だったから、今日で張りつめた気持ちが和らいだよ・・」
 タクミが話を続けて、安心の吐息をついた。
「メイと、もう1度こういう風に時間を過ごしたい・・・」
 ヒカルがメイのことを考えて、表情を曇らせる。
「叶うだろ。叶うって思ってるんだろ、ヒカルは?」
「・・うん・・絶対に諦めない・・メイとまた、こういう時間をまた過ごしたい・・・!」
 タクミの言葉に後押しされて、ヒカルがメイへの思いを口にする。
「もちろん全力勝負をすることになる・・その後なら、一緒に過ごすことができるはずだよ・・・!」
「そうだよ。ヒカルならその意気でなくちゃ。」
 頷くヒカルにタクミも笑みをこぼした。
「私も力になります。ブレイドたちも力になってくれるよ・・」
 アリシアが微笑んで、ヒカルたちを支えることを決めていた。
「ありがとう、アリシア・・ブレイドさんたちにも感謝しているよ・・」
 ヒカルがアリシアに感謝して、みんなに支えられていることを実感した。
(メイ、私は諦めないよ。みんなも力を貸してくれる・・あなたともう1度、お話とかお買い物とかしたい・・前みたいに・・ドライブウォーリアーになる前みたいに・・・)
 メイとの再会と和解を、ヒカルは心から願っていた。

 ヒカルたちから離れて、メイは1人で旅をしていた。彼女はヒカルと再戦し勝つために、強くなろうとしていた。
(ヒカル、今度は私が勝つ・・誰にも邪魔をさせず、最後まで戦って決着を付ける・・・!)
 ヒカルへの敵意を胸に秘めて、メイが見つめる右手を握りしめる。
“What do you do after rematching her and defeating her?(もしも彼女と再戦して倒した後、あなたはどうするのですか?)”
 ハデスがメイに向けて問いかけてきた。
(その後のことは、今は考えていない・・ヒカルを倒した後に考えればいい・・)
 メイが自分の考えをハデスに伝える。
(それでもハデスは私に賛成する?光を倒すこと以外は先が見えてないよ・・)
“No matter what choice you make,I will follow you.Because I am your device.(たとえあなたがどのような選択をしても、私はあなたについていきます。私はあなたのデバイスですから。)”
 問いかけるメイに、ハデスが意思の上でも行動を共にすることを告げた。
(ありがとう、ハデス・・私の戦いに付き合ってくれて・・・)
 メイはハデスに感謝して、再び歩き出した。ヒカルに勝つため、メイは強くなるための旅に出た。

 ヴァンフォードとの戦いやメイトの激闘を経て、日常に戻ったヒカルたち。自分たちの居場所を守れたことを感じて、ヒカルたちは安らぎを感じていた。
「いらっしゃいませー♪こちらの席へどうぞー♪」
 ヒカルが接客をして、明るくお客を案内する。調理をしているタクミが、ヒカルの明るさに励まされる。
(私は今のこの時間を精一杯生きていくよ。タクミたちと一緒に・・)
 ヒカルが心の中で、メイに向けての言葉を呟いた。
(メイ、あなたと戦うときは、私の中にある思いをみんなぶつけるからね・・・!)
 メイとの再会と再戦を予感しながら、ヒカルは今の日常を生きていく。タクミたちとの絆を実感しながら。

 孤独から抜け出したヒカル。
 新しい居場所、新しい仲間、新しい決意を得て。

 

 

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