Blood Sexual Twin- File.13 ルナとナナ

 

 

 ルナとナナの一瞬の攻撃に右腕を傷つけられたリナが驚愕する。2人の持つ剣は白い光を放ち、鋭く研ぎ澄まされていた。

「そんなバカなこと!?・・こうも簡単に私を!」

「言ったはずよ・・たとえあなたでも、私たちの自由と幸せを壊すことはできないと・・」

 声を荒げるリナに、ルナが鋭く言いかける。

「これは私たちの力を結集させたもの・・この剣で切れないものはない・・」

「もしも切れなくなったとしたら、それは私たちの心が折れたとき・・・」

 ルナに続いてナナも言いかける。2人の気持ちは、どんな逆境でも揺るがないものとなっていた。

「あなたたちのひとつになった気持ちが強いから、私を傷つけたとでも・・・ありえないわね!」

 この事実を受け入れられずにいたリナが声を荒げる。

「私は女を手に入れる者!その私が、女にここまでやられるなんてこと、あっていいはずがない!」

「認めたくないのね・・でもこれは現実・・」

「どんな力でも、現実までは否定できない・・・」

 怒鳴りかけるリナに対し、ルナとナナは真剣な面持ちのまま答えていく。

「私は吸血鬼みたいだといわれていじめられてきた・・事件に巻き込まれて死に掛けて、ブラッドになって・・暴走してみんなを殺して・・・どんなに否定しようとしても、それらは否定できない現実・・・」

 ナナが沈痛の面持ちを浮かべて、自分の生い立ちを口にする。

「こんなイヤなこと、経験したくなかったと、どんなに願ったことか・・なかったことにできないかと、どんなに思ったことか・・・でもそれは絶対に叶わないということを、私は知ってしまった・・・」

 言いかけるナナが剣の柄を強く握り締める。

「だから私は、何もかも受け入れる・・みんなを殺してしまった罪も・・・」

「ナナ・・・私も背負っていくよ、ナナ・・私自身の罪はもちろん、あなたの罪も・・2人で背負っていけば、償いも難しくないはず・・・」

 ナナの決意を受けて、ルナも自分の想いを口にする。2人は完全に一心同体となっていた。

「罪?そんなもの、力のある人にとってはすぐにかき消せるものなのよ・・・!」

 だがリナは2人の決意をあざ笑うと同時に、全身から力を放出させる。だがルナもナナも全く動じない。

「現実は覆るのよ・・私には、それが許されている・・・」

「いいえ。あなたでも、この現実だけは覆せない・・・」

 悠然さを振舞おうとするリナだが、ルナは言葉と考えを変えない。

「たとえどんな武器を持っていても、私には敵わない・・・」

 いきり立ったリナの額に亀裂が生じる。石化の光を放つ第3のめが開かれようとしていた。

 だが次の瞬間、開きかけたその眼に、ルナとナナの剣が突き立てられた。

「なっ・・・!?

 あまりに一瞬だったため、リナは言葉を出すことができなかった。眼の上から流れ落ちてくる血を見て、彼女はここで初めて驚愕した。

「私の、力が・・・ああぁぁぁーーー!!!

 絶叫を上げてその場にひざを付くリナ。噴き出した鮮血が広間の床にあふれていく。

「この私が!この私が、力を失う!こんなバカなこと!バカなこと・・・!」

 混乱し、声を荒げるリナ。それはまさに断末魔そのものだった。

「私はまだ、世界の全ての女を手に入れていない・・こんなところで死ぬわけにいかない・・力を失うわけにいかないのよ・・・!」

 力を振り絞って立ち上がろうとするリナだが、多量出血によって彼女の体は力を失い、麻痺しようとしていた。そんな彼女を、ルナとナナが深刻さを込めて見つめる。

「もう終わりにして・・こんなことをしても、誰も喜ばないから・・・」

 ナナが低い声音で呼びかけるが、リナはそれを聞き入れようとせず、なおも立ち上がろうとする。

「これは私の喜びのためにしているのよ・・私は、あなたたちも手に入れて・・・!」

 だがその意思に反して、リナの体は重くなっていた。悲鳴を上げる体に耐えられなくなり、彼女は再び倒れ込む。

「私は・・・私は・・こんなところで・・・」

 現実に抗おうとするも、リナはついに朽ち果てた。額から出た鮮血が血溜まりとなってあふれ返っていた。

「もういいでしょう?・・他人の体と心をムチャクチャにした・・その報いよ・・・」

 ルナがリナを見つめたまま呟きかける。彼女の心には敵を倒した喜びではなく、命を手にかける罪深さと悲しみがあった。

「これが命を奪うことの、罪の意識ということなんだね・・ホントに、虚しい・・・」

 虚無感を募らせるあまり、ナナの眼から涙があふれていた。

「それじゃナナ、私たちは退散しましょう・・」

「えっ?リナが死んで、みんな元に戻るよ・・ルナのお姉さんだって・・・」

 微笑んで引き上げることを提案するルナに、ナナが当惑を覚える。するとルナが物悲しい笑みを見せる。

「お姉さんは、私がブラッドであることを知らない・・私がブラッドとなったのは、お姉さんがリナに石にされた後だったから・・・」

「ルナ・・・」

 ルナの言葉に困惑を覚えるナナ。だがその気持ちが揺るがないものとなっていることに気付いており、ナナはルナをとがめることができなかった。

「でもいつかまた、会いに行ったほうがいいと思うよ・・姉妹だから・・・」

「そうね・・いつか打ち明けたいと思う・・何もかも・・・」

 ナナの言葉を聞いて、ルナは安らぎを取り戻して小さく頷いた。

「石にされていた人たちは、警察が何とかしてくれるだろうから・・真相は分からないでしょうけど・・」

「そうだね・・何にしても、もう大丈夫だよね・・・」

 ルナの言葉を受けて、ナナも頷く。2人は退散すべく、大広間を後にしようとする。

 だが部屋を出ようとして、ルナたちはふと足を止めて、リナに眼を向ける。

(リナ・・私の因果・・・さようなら・・・)

 自らの因果に別れを告げて、ルナはナナとともに改めて大広間を出た。

 

 リナの死によって、彼女によって石化されていた女性たちは、その呪縛から解放されていた。自分の身に何が起こったのか分からず困惑したり、裸になっていることに動揺したり、いろいろな様子を見せていた。

 その中でミーナは肩を落としていた。涼んでいた気分が崩されたことに彼女は落胆していた。

「ふぅ・・このクールな時間もおしまいかぁ〜・・」

 気のない独り言を口にして、ため息をもらすミーナ。

「まぁ、また涼しくなれる機会があるはずだからねぇ・・気ままに回ってみますか・・」

 ミーナは言いかけると、裸であることも気にせずに部屋を出た。

「とりあえず北にでも行ってみようかなぁ〜・・北のほうが涼しいからねぇ〜・・」

 ミーナは呟きながら廊下を歩き、ある部屋に差し掛かる。

「とりあえず何か着ておかないとねぇ〜・・いくらなんでも丸裸で街を歩くのは私も気が引けるからねぇ〜・・」

 ミーナはそう言うと、部屋にある衣服をいくつか拝借していくことにした。もっとも、この屋敷の主は今は存在していないが。

 適当に着用すると、ミーナは大きく背伸びをする。

(ルナ、ナナ、いつかまた遊んであげるからね・・でもあまり熱いのは勘弁してほしいけど・・)

 ルナとナナのことを思い返しながら、ミーナは夜の闇に消えていった。

 

 その後、通報を受けた警察によって、リナに誘拐されていた女性たちは保護された。ルナとナナの思ったとおり、警察は事件の真相をつかみきれないまま、捜査を打ち切ることとなった。

 女性たちが全員保護されたことで、人々はひとまず安堵することができた。

 その一夜が明ける中、ルナとナナは家にいた。力を使い果たした2人は、ベットで横になった途端、眠りについていた。

 リナを倒し、自分たちの因果を断ち切ったルナとナナ。2人が眼を覚ましたときには、既に正午を回っていた。

「眼が覚めたようね・・といっても、私も今起きたところだったのだけれど・・」

 ルナが微笑みかけて、ナナに声をかけてきた。

「昨日は本当に疲れたよ・・今のこの時間が夢なのか現実なのか分からないくらい・・・」

 ナナが物悲しい笑みを浮かべて、呟くように言いかける。

「私も実感が持てない・・もしかしたら、何もかもが夢か幻だったんじゃないかって思う・・・」

「うん・・でもこれは紛れもない現実・・これまでも、今も・・」

「ちゃんと受け止めないと・・現実逃避をしても、何も変わらない・・・」

「分かってる・・ちゃんと受け入れるよ・・この現実も・・今まで犯してきた罪も・・・」

 互いに言葉を掛け合い、頷きあうルナとナナ。2人は未だにベットから起きようとしない。

「このまま寝てしまおうよ、ルナ・・今日は本当に力が出ない・・・」

「私も・・吸血鬼は、昼間は寝ているものよね・・アハハハ・・・」

 ナナの呼びかけに、ルナが冗談混じりに答える。

「どうせなら、また2人だけの時間を過ごしたい・・・」

「私も・・・これからも、一緒にいようね・・ルナ・・・」

 言いかけると、2人は着ているものを脱いで、再び抱きしめ合う。

「おかしな感じ・・まるで母親に甘える赤ん坊みたい・・・」

「そうだね・・でも、そういう気分が、私にはたまらない・・・」

 苦笑いを浮かべるルナとナナ。2人は互いの胸に手を当てて、その感触を確かめる。

「やっぱり、ナナの胸のほうが大きい・・・」

「私は、ルナの胸のほうが好きだよ・・私を優しく受け止めてくれる・・・」

 ナナがルナにすがりつき、その胸に谷間に顔を寄せる。

「ナナ・・顔をうずめられたら、私、おかしく・・・あぁぁ・・・」

 ナナから吐息を受けて、快楽を覚えるルナ。ルナは感情の赴くまま、たまらずナナの胸を揉み解していく。

「んん・・ルナ・・もっと・・もっと・・・」

 ナナも快楽に身を委ね出した。2人の心に宿る高揚感が膨らんでいく。

 やがてその快楽が頂点に達し、ルナとナナの秘所から愛液があふれ出した。

「構わない・・我慢しない・・私、もっと触れていく・・だからナナ、あなたももっと来て・・・」

 ルナがあえぎ声を上げながら、ナナに呼びかける。するとナナはルナの秘所に触れてきて、愛液を口に含んだ。

「ルナ・・ルナの気持ち、伝わってくるよ・・・」

「私もよ、ナナ・・今なら、ナナの気持ち、理解できるから・・・」

 絶頂の快楽に身を委ねたナナとルナ。2人はその恍惚に溺れたまま、眠りについていった。

 

 それからしばらく、ルナとナナは家での平穏な日々を過ごした。2人はこれから自分たちが何をしていけばいいのか迷っていた。

 自分たちを縛る因果は断ち切れた。人として帰る場所はこの家以外にない。

 これからの自分たちの道は、自分たちで見出さなくてはならないのだ。

 そしてナナは、旅立っていくことを決意する。それを聞いたルナも同意して、行動を共にすることにした。

「2人だけの旅か・・そういうのもいいかもしれないね・・」

「私は1人でずっといろいろと回っていたけど、ずっと1人きりだった・・ナナと一緒で、少し不安が和らぐよ・・」

 ナナが言いかけると、ルナが心境を語りかける。

「私たちに何ができるのか、何をしていけばいいのか、まだ答えが出ていない・・私たちが一緒にいることしか・・」

「この旅の中で、その答えを見つけていきたい・・ううん、必ず見つけられる・・・」

 揺らぐ気持ちを落ち着かせて、前を真っ直ぐ見つめる2人。

「これからどんなことが起こるのか分からない・・あのミーナとまた会うかもしれない・・リナ以上の敵と出会うかもしれない・・・」

「どんなことがあっても、もう挫けたりしない・・私たち2人一緒なら、怖がったりダメだと思ったりしないよ、きっと・・・」

「ありがとう、ナナ・・・これからも私たちは一心同体・・離しても離れない関係なんだから・・・」

 ルナとナナは言葉を交わすと、互いの手を握り締める。

「出会ったのは偶然か運命・・でもこの出会いで、私もあなたも運命が大きく変わった・・・」

「救われたのか、それとも堕ちるところまで堕ちたのか・・でも・・・」

「この絆が結ばれて、どんなことをしても断ち切れないほどに強くなったのも事実・・・」

「この想いと、今まで積み上げてきた罪を抱えて、私たちは歩く・・・」

「私たちはまだ、暗闇の中にいるけど・・・」

「いつか光をつかめるときが来る・・あの時発した剣の輝きのように・・・」

 想いを募らせる中、ルナとナナの握り締める手に紅く淡い光が灯る。

「行こう、ナナ・・・」

「うん、ルナ・・・」

 新しい人生のスタートを切り、歩き出すルナとナナ。2人の手にある光は灯ったまましばらく消えなかった。

 それは2人の絆を象徴しているかのようだった。

(私たちは歩いていく・・暗闇と血塗られた運命の中、わずかにきらめく光を求めて・・・)

 決意と想いを胸に宿して、ルナとナナは歩いていく。何が起こっても、2人でなら乗り越えられると信じて。

 

 

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